season's cake 028 1/1
『傘をあげる』
君はいつも窓際で、雨が止むのを待っている。
伏せた睫毛が濡れた硝子に映るのが、
まるで君が泣いているように見えて。
慰めるすべを知らない僕は、
雨止まないね、とか
椅子に座りなよ、とか
全く情けない声で。
気の利いた台詞さえ言えなくて。
どうしたらこっちを向いてくれるんだろう、とか
どうしたら笑ってくれるんだろう、とか
どうしたら君を幸せにできるんだろう、とか
ぐるぐるぐるぐる考えて。
…結局、袋小路。
さらさらと降り続ける雨に、
君の瞬きの音がかき消されて。
さらさらと窓を伝う雨に、
君の姿がどんどん曇っていって。
僕は慌てて、手を伸ばす。
――消えてしまわないで。
急に抱きしめたから、君は少し驚いて。
身じろぐ体は案の定冷えていて。
そのまま体温を分け与えたら、
少しだけ笑ってくれたから、僕はほっとして。
雨が晴れたら散歩に行こう。
焼きたてのパンと、君のために花を買って。
もし途中でにわか雨に出会っても、僕のシャツで君は雨宿りできるから。
もう一人で泣いたりしないで。
いつでも僕が、傍に居る。
special thanks for PIYO・PIYO
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