season's cake 069 1/1




『この雨が止むまでは』


初めて知った恋は――愛しさよりも先に、切なさを運んできた。

いつもの植物園に、いつものカフェ。いつものケーキセット。
白いプレートに描かれた甘い芸術は、苺が乗ったショートケーキだったり、タルトだったり。
私が大好きな甘酸っぱさと、私が大好きな――苺と同じ名前のひと。

いつもの景色が雨に濡れる。
霧雨を避けて逃げ込んだ花屋さんの軒先で、見上げる高さのあなたの顔が、いつもよりも少し近い。
視線は外したままでそっと触れる指に、心臓が跳ねる。

――もう少しだけ。

降る雨に冷たく沈む夕暮れなのに、繋いだ手と頬がやけに熱い。
恥ずかしくて逃げ出したいのに、あなたの傍にいたいと思う、相反する心。
愛しさに痛む胸が、雨音よりも激しく脈打つのが聞こえてしまいそうで怖いのに。
――でも。
この雨が止むまでは、もう少しだけ。
また会う約束の前に、もう少しだけ。

あなたの傍なら、雨に濡れてもきっと、冷たくはない。




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