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『やわらかな夜』


 真夜中。

 ようやく仕事を終えて家に帰ったら、玄関に自分の物ではない、けれど見慣れた靴があった。
 …?
 ちゃんと鍵は掛かっていたし、電気だってついていないし、「今夜行ってもいい?」とかいう前もった打診もなかったし、果たしてどういうことだろうと思ったけれど。
 まぁ、合鍵なら渡してあったし。

 リビングにキッチンにトイレにお風呂場に、と、とりあえず巡ってみたけれど、件の人影はなし。
 ふむ。
 残るは寝室か。
 時間的にも考えて、やっぱりそこが一番可能性が高いよな。

 キィ、と少しだけドアを軋ませて開けて、背中から照らすリビングの明かりを頼りに中を覗くと、――ほら、やっぱり。
 くうくうと、安らかな寝息がベッドの上。
 おーい着替えもせんで寝てると服が皺になるぞー。
 …。
 これは、帰ってくるのを待っててくれたのだろうか? けれど待ちくたびれて、睡魔に負けた…そんな雰囲気。
 何故かベッドの端に寝てるし。もうちょっとで落ちそうだし。ひとりなんだから、真ん中で寝ればいいものを…って、そう言えば一緒の時はいつもそっち側に寝てたな…。
 って。
 ひょっとして、無意識に癖付いてしまっているんだろうか? 隣に居るのがアタリマエ、なんて。
 …うわ。
 何か妙に嬉しいな、それ…。

 寝顔があんまり幸せそうで、気持ち良さそうだから、せっかく空けてくれてる隣に転がろう。
 着替えなきゃ、とか、風呂入らなきゃ、とか思ったけど、そんなのは起きてからでもいいし。

 とりあえず、この温かい抱き枕と一緒に、幸せな夢でも見に行こうかな。


 -fin-


special thanks for メイ。




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