showcase 002 1/1
『やわらかな夜』
真夜中。
ようやく仕事を終えて家に帰ったら、玄関に自分の物ではない、けれど見慣れた靴があった。
…?
ちゃんと鍵は掛かっていたし、電気だってついていないし、「今夜行ってもいい?」とかいう前もった打診もなかったし、果たしてどういうことだろうと思ったけれど。
まぁ、合鍵なら渡してあったし。
リビングにキッチンにトイレにお風呂場に、と、とりあえず巡ってみたけれど、件の人影はなし。
ふむ。
残るは寝室か。
時間的にも考えて、やっぱりそこが一番可能性が高いよな。
キィ、と少しだけドアを軋ませて開けて、背中から照らすリビングの明かりを頼りに中を覗くと、――ほら、やっぱり。
くうくうと、安らかな寝息がベッドの上。
おーい着替えもせんで寝てると服が皺になるぞー。
…。
これは、帰ってくるのを待っててくれたのだろうか? けれど待ちくたびれて、睡魔に負けた…そんな雰囲気。
何故かベッドの端に寝てるし。もうちょっとで落ちそうだし。ひとりなんだから、真ん中で寝ればいいものを…って、そう言えば一緒の時はいつもそっち側に寝てたな…。
って。
ひょっとして、無意識に癖付いてしまっているんだろうか? 隣に居るのがアタリマエ、なんて。
…うわ。
何か妙に嬉しいな、それ…。
寝顔があんまり幸せそうで、気持ち良さそうだから、せっかく空けてくれてる隣に転がろう。
着替えなきゃ、とか、風呂入らなきゃ、とか思ったけど、そんなのは起きてからでもいいし。
とりあえず、この温かい抱き枕と一緒に、幸せな夢でも見に行こうかな。
-fin-
special thanks for メイ。
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