showcase 006 1/1




『One night with chocolate』


 やがて夜が明ける。
 白み始めた空が薄くカーテンから透けて、朝の気配がベッドの脇までもう少し。
 予定の5分前にふと目を覚ました私は、片手を伸ばして、ベルが鳴る前に目覚ましを止めた。

 そうっと。隣で寝ている彼を起こさないように。

 見ていて枕が可哀相になるくらいの豪快な寝相のわりには、私に被害を与えたりしない、むしろ安心をくれる長い腕。
 ブランケットの端をちょっとだけ引っ張ったら、つられた彼がころんとこっちを向いた。
 頬にかかる少し長めの髪は、薄闇に溶けたチョコレートの色。

 ふふっ、と、笑みがこぼれる。

 普段こんな風に顔を見て笑ったりしたら、「何やってんの」なんて言われるのが関の山だけど。
 寝ている彼は文句を言わない。
 文句を言ったりはしないので、私はこのチャンスにじっくり彼の顔を見つめることにしている。
 逢えない時の分も、じっくり補充。
 この時間があるからこそ私は待っていられるんだと、この人は知っているのかしら。

 彼の寝息が、私の髪をわずかに揺らした。
 いつの間にかブランケットごと彼の腕に包まれて、ぬくぬくと夢の中に戻りそうになる。
 ――いけない、いけない。


 求める夜。
 疑う夜。
 離れた夜。
 涙した夜。
 許す夜。
 たくさんの夜を経てたどり着いた、ただ寄り添って過ごす夜。


 夜明けまで、あとわずかな時間しかないけど。
 まだ少し。あともう少し寝かせてあげよう。
 もう少しだけ、彼とブランケットに包まれていよう。

 寄り添うことで手に入れた恋は、少し甘くて、少し苦くて、でも舌に優しくとろけるビターチョコレート。


 -fin-


reproduced 【bless you!】
special thanks for ハル




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