showcase 007 3/3
『nail』
爪を切る音がする。
パチン パチン
その人はソファに腰掛けて、
傾けた顔に前髪がはらりと落ちて、
ベランダからの光に淡く透けるから、
私は、
ああ綺麗だと見惚れる。
膝の上のプラスチックのダストボックスに、
白い欠片が吸い込まれて落ちる。
それは誰にでもある日常の風景で、
まだ、
私の知らない、彼の日常のひとこま。
膝に寄り添って、
指先を見つめて、
そうして彼をひとつずつ知っていく。
爪の短くなった手をつないで、
さあ、
今日は何処へ出掛けよう。
そんな、穏やかなふたりの昼下がり。
-fin-
corrected 『nail』 (2004.9.12 presented)
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