showcase 009 2/2




『グラス』


 Glass.
 Sunglasses.
 昼間の二人を遮るもの。

 モノクロで世界を隔てる、現の世界のあなたと私。
 他の眩しさに気を取られて、互いの光に気がつかないふりのあなたと私。
 別人の顔をして、すれ違う一瞬にさえ視線を交わさず颯爽と。けれどその姿はどこか寂しい、Sunglasses。


 Glass.
 Wineglass.
 夕暮れを待って二人で酌み交わすもの。

 暮れゆく窓辺に灯りをともして、指の先でもどかしく触れ合わせる酔いを誘うもの。
 不意の本音にはっとさせられ、不意の弱音に居たたまれないほど、強く私を惑わせるもの。
 それは、自然に距離を近づける潤滑油。
 緩慢な瞬きであなたを引き寄せたら、いっそ口移しで飲み干して紅く染まりたい、Wineglass。


 Glass.
 Glassharp.
 月にも隠してあなたが奏でるもの。

 あなたの声に勝る美しいものはないと思うのに、あなたは私の方が綺麗だと言う不思議。
 もっと聴かせて欲しいと強請る睦言。
 それはその繊細な指が奏でる音だからきっと美しいのであって。その身体が刻むリズムだからこそ熱を感じるのであって。
 与えてくれるのがあなただからこそ、私はとめどなく溢れるのであって。
 密着して直接骨を震わせる声に、浮ついた意識が掠れる程。
 夜の帳に高く細く名を呼んだなら、月にさえ隠して奏者が微笑む、Glassharp。


 Glass.
 Glassheart.
 朝を迎えた私が抱えるもの。

 シーツを引き剥がして敷き替えたら、そこにあなたの痕跡を見失う気がする眩暈。
 重ねる度に曖昧になる夢現の境界を、色硝子で誤魔化しては平静を装う、新しい朝。
 確かな言葉があるわけでもなく、満たされるでも渇くでもなく。
 ただ現状が続けばと望み、その腕の中にたゆたう夢に想いを馳せ次の夜を待つ、Glassheart。


 Glass.
 Glass is "glas".
 無定形で透明で、硬くてもろい、あなたと私。


 -fin-




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