showcase 010 4/4
……。
…あの…ちょっと…笑顔が物凄く何かを企んでる気がするのは気のせいじゃない…よねぇ!?
「嘘っ、やだやだちょっとやめてよ、もう!」
そんなつもりで言ったんじゃないしー!!
予想してなかった展開に、冷や汗とか変な涙とかが急に出てきた。
いきなり来ていきなりなんなのよー!? 来て5分よ!? 朝っぱらよ!? ろくに会話もせずにこれですかい!!
「ちょっ…駄目だってば…っ!」
やだやだなんて暴れても、彼には簡単に押さえ込まれてしまう。
恋人という関係上、そもそも本気で抵抗しようという気にはなりにくいものだけれど…。
「…抵抗されると結構燃えちゃうんだよね」
耳朶に触れる近さでズルくて低い声にそう宣言されて、思わず体が強張った。
――逢えなくて寂しかったのは自分だけだと思ってないよね?
そう囁かれて、僅かにこちらを見上げるような、熱を孕んだ視線を相手に居たたまれなくなった。
強がりや負けん気といったものが急速にしぼんでいって、自分がとてもちいさな存在になったような気持ちになる。
「また泣きそうな顔してるよ?」
それはあなたのせいです、とは恥ずかしくて口には出せなかった。
泣いてるところを見られてるし、慰められてるし。今更寂しくなかっただなんて嘘はつけない。仮にそうやって嘘をついたとしても――全部、彼はその強い目で見通しているし。
こういう風に抱きしめられるだけで昇華するような想いじゃないけれど、側にいると欲しくなるのは逆らいようのない引力で。
強張った体の力さえ吸い取ってしまいそうな視線に堪らず目を閉じると、待っていたように唇が触れてきた。
「お…覚えてなさいよっ…」
それでも本当は嫌じゃないのだから、私もどうして困ったものだ。
苦し紛れの抵抗も、「ドコが弱いだとかそういうのならちゃんと覚えてるよ」なんて、言葉通りの本格的な攻撃の前に、白旗を揚げざるをえない。
赤く熱くなった顔を見せまいと手で覆おうとすると、すかさず彼に絡め取られる。
「おっかしいなぁ。俺、午後から仕事なんだけどなぁ…」
そんなことを言いながらも、クスクスと楽しそうな笑い声が喉元をくすぐる。熱いてのひらが蠢いて、夏の太陽が照らすように私の体温を上げてゆく。
それを嬉しいと思いながらも、せめて勝てる見込みの全くない視線からだけは逃れようと、顔を背けた先には朝の光。
すっかり明けた窓の外では、彼と一緒に植えた朝顔が、今年最初の花を咲かせていた。
-fin-
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