showcase 012 2/2
…ま、5分後には自分の浅はかな言動を呪うことになるんだがな。
自分の髪はなんとか出来ても、人のだと難しいもんだと俺はしみじみ思い知った。
なんだかんだで、俺的最高傑作な芸術作品が出来上がる頃には、俺本体は汗ダクのびしょびしょになっていた。
ヘロヘロな俺を見て、ピカピカになった彼女は言う。
「もう1回お風呂入ってきたら?」
うん、俺もそう思ってた。
…て。
おまえさん、俺が戻る頃には一足お先にすぴすぴ寝てたりするんだよな、チキショウっ。
一人寝予防策というか最短距離直行というかで、このまま風呂場に力技でもって逆戻りするのは可能だが、イヤラシイの万歳とは言え、流石にそれは後々口聞いてくれなさそうだ。
それにそれに、折角の俺の最高傑作がっ。つやつやさらさらストレートがっ。綺麗な天使の輪っかがっ。
…いやどのみちソウイウコトになると乱れちゃうわけなんだがな、うん。
というか俺が乱しちゃうのか、うん。
…………。
み……乱してぇ……。
「出てくるまでに、お酒とおつまみ用意しておくから」
――酒とかツマミとかはいいから、はやくアナタを頂戴よ。
…とはなかなか言えないんですがね、俺も男なんだよ、と。
察してくれよと思うだけじゃ、やっぱり駄目ですかねぇ。…はぁ。
さらさらな髪を揺らして、にこりと彼女が笑う。
――ああなんか、どうでもよくなってきた。
や、どうでもよくはないはずなんだが、うやむやのなし崩しでもいいやとね、その顔を見てると思っちゃうんだよね。
「仕方ないのでもう1回風呂に入ってくるであります…」
我ながら、今のは大分渋い声が出たように思うぞ。
「うむ。…はやく出てきてよ?」
自分は散々待たせておいて、俺にははやく出てこいとな?
しかしながら、「ね?」と見上げてくる彼女があまりに可愛らしくて、俺はうっかり見惚れてしまった。
そしてすっかり失念していた。
冷蔵庫では買い出し直後の酒類の山がいい具合に冷えているということと、「待ってる」と言いながら先におっぱじめるのが彼女の常であることと。
そんでもって、酔った彼女は俺なんか前足でひょいと転がせてしまうほどの、大トラになるということを。
でもまぁ…時にはこんな日常も、悪くはないと思ってたりしてな。
甚だ悔しいんだがね、悪くはないんだよ。重症だよなぁ。どうしてくれんだ。
だってだな、惚れた弱みだなんてのは、俺にとっては「幸せ」以外の何物でもないんだから。
-fin-
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