showcase 017 4/5
「「ブッ」」
互いの形相に同時に吹き出して、私たちはお腹を抱えた。
「なに今の、へっ…変なとこで一時停止ボタンを押したような顔はっ…!」
「自分だって、人のこと言えなっ…!」
呼吸困難になるかと思うほど、色気のかけらもなく笑い転げて、やっとの思いで息を繋ぐ。
「お腹痛…っ」
「うん、でもいいプレゼント貰ったかも」
「…プレゼント? それはまだあげてないよ?」
「まぁ、俺が嬉しいと思ったからプレゼントでしょ、これも」
「…意味わかんない」
正直な感想を述べる私に、彼はやけに柔らかな笑顔を向けてきた。
それこそ歌でも歌いだしそうなご機嫌のよさについてゆけずに首を傾げると、その空いた肩に彼が寄ってくる。
――Let me love you for a little while♪
耳元で突然歌いだされたものだから、私は「ふみゃあ!?」なんて意味不明な言葉を叫んで、ソファに倒れた。
反則! それ反則だから!
「みっ、耳はやめてって!」
「ダメと言われたらやりたくなるのが男というイキモノなのよ? ひとつ賢くなってよかったなー」
涙目な私の視界に、がははと笑いながら私の頭を撫でる手から二の腕、肩、顔と、彼のパーツが順にアップになっていく。
顔を通り越して喉元がアップになる一瞬前、その瞬間に、「ニヤリ」と表情が歪んだ気がした。
「さて、よいしょ」
軽い掛け声がまたしても耳元を掠めて首をすくめる私の体が、ふわりと宙に浮いた。
「もう俺、さっきの告白で胸いっぱいだからケーキ食べられないなぁ」
――さて、どうしたもんでしょうかね?
「どうしたもこうしたもないわよ!」
ずいぶんと心臓に悪い浮遊感が、私の平常心を一気に吹き飛ばしていく。
「降ろして! 降ろしてってば!!」
足をばたつかせようとも、しょせん女の力といった体で彼はちっともびくつかない。
その頼もしさは別のところで発揮していただきたいんですけどー!?
「今日のこの日に、お誕生日様に逆らえる者などいないのだ! ふははははッ、観念して美味しく頂戴されろ!」
さっき下手に訊いてきたアレは一体誰だというのだろう、この人…どうしようこの人…日本語おかしいし…。
って、そんなことを考えている場合ではない。
「やだーっ、暴君ー!!」
「なんとでも言いなさーい」
「ばかー! 全っ然、ムードないー!」
「それ今売り切れ中でしてねぇ。ふぉっふぉっふぉっ」
胡散臭い笑い声ではぐらかそうとする彼に、私は必死で別の方向から抵抗しようと試みる。
「うーっ、高いの怖いーっ降ろしてーっ」
「安心したまえ、俺がおまえさんを落っことすわけがなかろう。…それよりアナタ、秋だからってちょっと太ったね?」
どきっ。
「…………」
しまった…やぶ蛇だったか…。
「ほれ、言ってごらんなさいな。一体何キロ増えたの、体重」
責めるでもない口調にへらっと笑いを返して、嘘のつけない私は正直に告白するしかない。あああ、自分で窮地に追い込まれてどうしよう…。
「……に…2キロ…弱…?」
蚊の鳴くような私の声は、しっかりと彼の耳に届いていた。
「ほほーう。さてここで問題です。2キロ分のカロリー消費をしようと思ったら一体何回…」
「変態!! 間違った計算しない!!」
一気に顔に血がのぼった私を見て、彼はまた「ふははははッ」と笑った。
…悪役笑いが似合う恋人なんてッ。
その後、「落っことすわけがなかろう」なんて言ってたくせに、調子に乗った彼の手で、私はそれこそ文字通りにベッドにぽいっと投下されたのだった。
***
「やっぱり…朝からケーキはちとヘヴィ…」
ヨレたTシャツにまだ半分寝ているヨレた顔のままで、彼が言う。
昨日はなんだかんだと言いながらも結局は仲良く毛布に包まって、ぬくぬくと朝を迎えて、コーヒー片手に出番の遅れたケーキの登場。
起きぬけの彼はあまりに気の抜けた顔なので、寝ている隙に頬にキスしただとかっていうベタな話は黙っておこう。
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