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 私はマロングラッセを刺したフォークを、彼の前でゆらゆら揺らした。行儀が悪くてしかも愚痴ったれな姿勢なものだからふたり揃って顔をしかめることになるけど、そんなのは今は些細な問題だ。
「誰のせいだと思ってるのよ、誰の」
「…お誕生日様?」
「お誕生日様って誰よ。自分でしょー!?」
「いやアレはお誕生日様であって俺では…」
 もごもごと言い訳してそっぽを向こうとする耳を引っぱると、「あいててて」と弱弱しい抗議の視線が私をとらえた。
 私は負けじとそれを見返す。
「私、あなた以外の人と一緒に寝起きする趣味ないんだけど」
「…今、何気に可愛いことを仰いましたね?」
「!!」

「…隙ありッ!」

「!?」
 またしてもやってしまった、と私が愕然としてる間に、彼は私のフォークにパクッと食いついて、もぐもぐごっくんとマロングラッセを胃袋に収めてしまった。
「あああ私の栗ー!」
「つぅかコレ、俺の誕生日ケーキなんじゃ」
「私の栗…楽しみにしてたのにヒドイ」
「アナタはもう…」
 しょうがないねぇ、と彼が笑った。その笑い方は私のお気に入りで、なしくずしで私はプラスマイナスゼロな機嫌になる。
 男の人に「綺麗」なんていう感想は変なのかもしれないけど、ふわりと笑う彼はとても綺麗なイキモノで、私はいつも見惚れてしまうのだ。
「フレーバーだけなら分けてあげないこともないよ」
「…さては昨日のことを根に持って」
「おや人聞きの悪い。リベンジを企んでると言ってくれ」
 もう、しょうがないのはどっちなんだか。
 私は苦笑して、少しばかり彼の方に寄る。

 減らず口の応酬ばっかりでも、満足げな笑い皺を見るとやっぱりほんわりしてしまうもので。
 つられて頬が緩んじゃったりするもので。
 あーこの人のことがやっぱり好きだなーとか、一人で再確認とかしちゃったりまでして。
 …で。
 多分今、彼も同じようなこと思ってくれてるんだろうなーとか、感じちゃったりして。

 うーわー、バカップルにも程があるってのー。

「甘いものは別腹収納〜♪」
 歌うように離れた唇からは、ほんのり甘いラムの香りがした。
「誕生日が過ぎても俺ってステキ?」
「うん。スキ」
「…あのな、直球ストレートだと照れるじゃないか」
「…自分で要求しといていまさら恥らうわけ?」
 ほんっと、この人ってばわけわかんない。浮いたり沈んだり笑ったりしかめっ面だったり、綺麗だったりヨレてたり。
 わけわかんないから…だから彼をもっと知りたいと思ったり、もっとそばにいたいと思ったりするのかもしれない。
 そんなことを思いながら私は彼に寄り添って、彼に追い討ちをかけるように、それから私の悔しさを軽減させるために、照れてへの字に曲がった唇に自分のそれを寄せた。


 対等な関係で互いを支え合えるようになることが、私たちの理想だ。
 でも現状は、減らず口と不機嫌と笑いとその他諸々。それから、根底にはちゃんと愛もあるらしい。
 いくら歳を重ねても思うより子どもっぽくて、思うより負けず嫌いで、理想にはまだまだ程遠いような気もするけど。

 でも…ま、いっか。幸せだもんね。


 -fin-


image song : The Miracles 『LOVE MACHINE』
words by W.Moore,B.Griffin




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