showcase 020 3/4
――恥ずかしすぎ?
え、イジメすぎて怒らせたとか困らせたとかそんなんじゃなくて、恥ずかしくて泣いてんの? そうなの? キモチヨすぎて泣いちゃうのと似たようなレベルなの、つまり?
脳内で考えてることが君にマル聞こえだったら、絶対に怒られるような内容が、僕の頭の中をぐるぐる回る。
うわーうわーなんだこの嬉しいカンジ。
「今、スイッチ入ったかも」
君をすごくすごく愛しいなぁと思う、そんな想いの堤防が決壊しちゃうスイッチ。
僕は彼女を思わずぎゅっと力任せに抱き締めて、小さな後頭部も引き寄せた。
それから擦り寄せた頬に、――いつもと違う感触がした。
…………。
「うわぁぁ重ね重ねごめんなさいぃッ!!」
忘れてた。落書きされてたのきれいさっぱり忘れてた!
おかげで彼女の髪には、ベッタリとピンクのチョコレート。デコレーションなんて可愛いもんじゃない。
「……」
「…ごめんっ!」
なにがなんだかわかりませんって顔をしている彼女に、僕は恐る恐るさっきの鏡を差し出した。
自分の頭をそれに映した彼女の目が、まんまるになる。
「今すぐお風呂入るっ!」
「…一緒に?」
僕は思わず自分に都合のいい合いの手を入れてしまっ…うわぁぁ怒ってる…っ。
「そんなわけないでしょ!?」
キッと振り向いた顔は予想通りに耳朶まで真っ赤で、そのくせまた涙なんか滲ませていたから――僕は、あまりにもベタなことしか言えなくなくなるじゃない。
自覚ないかもしれないけどさ…そそるよね…こういうの…。
…なーんてことを言うとまた「恥ずかしい」とかって泣かれるのは目に見えているので、僕は何も言わずにへらっと笑って返した。
いやもうホントにダメな男でごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
君はまたキッときびすを返して、スタスタとドアの向こうに消えて行く。
バタンとドアが大きな音で閉まったけど、それが僕を拒絶する意味合いじゃないことはよく知ってるから、僕はなんだか本格的に笑いを堪えられなくなった。
「あははははっ」
どうしよう、君ってば可笑しすぎ。
どうしよう、君ってば面白すぎ。
どうしよう、君ってば可愛すぎ。
飽きさせないコロコロ変わる表情に、僕は囚われっぱなし。
それは君が僕にかけた、天下一品のチャームの魔法。
どうしよう。
君と居ると楽しすぎて、笑いが止まらないんですけど。
君がお風呂からあがってきたら、「もうイタズラしないから」と謝らなきゃ。
イジメてみたいけど泣かせたくはないから、もうイタズラしないから。
だからずっと一緒に居て、って口説き直さなきゃ。
『Trick or Treat?』って決まり文句が、「どちらかかひとつをあげるよ」って言ってるんだ。僕がどっちを選ぶかなんて、そんなのは簡単な問題だ。
僕にとっては、他の何よりも、君が一番甘いお菓子なんだから。
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