showcase 021 2/2




「好きだよ」

 抱かれた胸の中、その命を刻む音となかなかシンクロできない体を持て余し、私はまた夜を越えてゆくのだろう。
 せめてどちらかに転げてしまえば、曖昧であるよりは少しは楽になるはずなのに。それさえできない起き上がりこぼしのままで、ゆらゆら。
 共にあることの喜びと、共にあることの痛みの間で。
 さよならと大好きの間で、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。
 大きな手に抱かれながらも、ゆっくりとその指の隙間からこぼれていく心を、止められずに。

 温かな体に手を回して、抱きつく力のその強さで、彼を確かめる。
 本当に確かめるべくは私自身であるはずなのに、悲しい事に私は私自身を確かめる術を持たない。
 だから代わりに彼を確かめて――そうすることで、彼の中にある「私」を確かめるのだ。

 そして私は、その腕の中から抜け出せなくなる。
 「好きだよ」と囁いてくれる、その腕の籠の中から。

 こぼれることのない雫でゆらゆら歪んだ視線の先で、曇った窓が私の代わりにゆっくりと涙をこぼした。


 -fin-




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