showcase 024 5/5




 伸ばした爪でこちらの肌を傷つけないようにと、頬を抓んだ指には余り力が入っていない。
 俺は微かな痛みから簡単に逃れると、その指を捉えて自分の指を絡める。
 また眉をひそめたるぅの不機嫌そうな告白を上機嫌で聞いて、俺はもう1度るぅの耳に唇を寄せた。
 囁きにかさりとシーツを鳴らして震えるるぅの耳朶は、さっきよりも熱い。
「…お前、なんでそんなに可愛いわけ?」
 鼻の先で、るぅの髪はほのかなシャンプーの香りで俺を誘う。


 あの自動販売機で缶コーヒーを買うのは、これで最後にしよう。
 雨が止んでまっさらな朝がきたら、るぅにコーヒーを淹れてもらおう。
 休みの日の朝らしくしばらくのんびりしたら、るぅを部屋から連れ出して、揃いのコーヒーカップを買いに出掛けるのもいい。
 気に入る豆を探しに行くのも、そのまま助手席に乗せてあてのないドライブに行くのもいい。
 都会に毒された心を、その煩雑さを洗い流されたまっさらな街に、るぅを連れて。
 透ける風はどんな風にるぅの髪を撫でるだろう。昼間の空は、どんな風にるぅの肌を照らすだろう。
 愛を乞う花に降り注ぐ雨が、あたたかな陽に変わったら。
 ――そうしたら、るぅは俯かない笑顔を俺にくれるだろうか。

 るぅは夜目が利かない。
 夜目が利かないけれど、カーテンを閉めきった部屋にもやがて朝が来る。
 …朝が来たら、全てさらけ出してみようか。
 るぅが思うよりもずっと甘く、るぅを想っているこの心を。
 そしてふたりで、まっさらな朝からまた始めるのだ。あの雨の夜にるぅが俺を繋いだように、今度は俺がるぅを繋いで、陽の光の下へ。
 浮き立つ心に自然とにやけてしまうだらしない自分を隠すように、俺は組み敷いた白い喉元に顔をうずめた。

 抱き締め返してくる腕はやけに温かくて、細い指が、さらさら降る雨と同じ音で俺の髪を梳いた。


 -fin-


【RHAPSODY】 20000 hits memorial story.
[flavor : (cinnamon+vanilla)/rum , keyword : 雨(rain)]

reproduced 【CENTURY】
special thanks for RouRou




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