showcase 027 2/2




「今はだめです」
 今日中には作ってあげるからね?

 なるべく柔らかな声になるように意識すると、彼が渋々な様子で顔を上げた。
 …唇とがらせてみせたってダメなものはダメなんだからね。
「じゃあ今は、ケーキよりも甘いhoneyで妥協する」
「…なんかそれ、いつも似たようなことを求められてる気がする」
 それって妥協なんだと目で問えば、悪びれる素振りもなく彼が言った。
「darlin'よりもhoneyな甘さがお気に入りなんだよ。俺、甘いものは分け隔てなく愛してんの」
 あ、開き直った。
「ばかだね」と私が返すと、「お前にそう言われるのは嫌いじゃないよ」と彼が笑った。
 それはとても綺麗な笑顔で、ふにゃりと緩んだ目元や頬が、私まで幸せな気分にさせる。
 だから――彼が目的遂行のために肩に腕を回してくるのを、私はもちろん拒めない。
 ケーキと天秤に掛けられるのは正直どうかと思うけれど、彼が私を甘いと感じるように、私にとっても彼はとても甘いものだから。

「すっかり男に甘くなっちゃって…どうしようね、もう」
 照れ隠しに「明日も早いのになぁ」と呟けば、首筋に擦り寄ってきた彼に、耳朶をぺろりと舐められた。

「いくつになっても甘やかされたいんだよ、お前には」

 なんだかんだと結局はそういうことになるらしい。
 仔犬と呼ぶには大きすぎるレトリバーがじゃれついてきて、今度は鎖骨のあたりを甘噛みされる。
 甘やかしすぎはいけないよなーと思いながらも、彼に対する愛しさの方が勝ってしまった私は、またしてもその悪戯を許してしまうのだった。


 -fin-




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