showcase 032 6/6
BGM#The Christmas Song
1階の入口には、歌に合わせて踊るサンタの人形が置いてある。
いつもはシンプルな階段も、ポインセチアとヒイラギが段違いに配置されている。
クリスマスは過剰に演出した方がお客の購買意欲が湧いていいのだと、雑貨屋の店員は私に言った。
目に鮮やかな色に溢れた1階とは違い、2階のカフェはほぼいつもの姿を保っている。
変えたところといえば、メニューに苺や生クリームやマシュマロを使ったものが増え、カトラリーケースにリボンを巻きつけた、その程度だ。
カフェに置く今年のツリーは――雑貨屋に並んだ大小のファイバーツリーに対抗しようとした部分もあるが――昔から一般的な緑のそれに、LEDのイルミネーションを巻きつけただけのシンプルなものにした。
個包装したこんぺいとうをオーナメントに見立てて、お客さまに好きに飾って貰えばいい。
狙いは巧くいき、階段を上ってすぐの場所に設置したツリーには、今、カラフルな星がたくさん瞬いている。
季節柄、初来店のお客さまも増えた。
常連客は相変わらず好き勝手に居座って、忙しくしている私を冷やかしたり、逆に私に冷やかされたりしている。
カトラリーの赤と金のリボンを帰りがけにツリーに結んだり、装飾用のこんぺいとうを食べては連れに怒られていたり。
雑貨屋のイベントに参加したのか、トナカイの角のカチューシャをして撮った可笑しなポラロイドが飾ってあったり。
たまたまカフェにいた小さな子どものお客さまと仲良くなって、BGMと一緒にクリスマスソングを歌ったふたりもいた。
ただ、自宅用のオーナメントが決まらないからと、吹き抜けを通して私に意見を求められても困る。
毎日はとても賑やかに過ぎて行く。
私は閉店間際のほんの僅かな時間に、ようやく自分のためだけの珈琲を淹れた。
カップが空になる頃には、1階から閉店時間を知らせる音楽が聞こえてくる。
――クリスマスケーキの予約こそ受け付けてはいないが、25日夜の雑貨屋とのクリスマス会用にはブッシュ・ド・ノエルを焼こうか。
思いついたことをつらつらと書いて、私はレシピノートを閉じた。
優しい甘さと、優しい苦さ。
少し休みたいなと思ったら、あの階段を上がってくるといい。
私はいつもこのカウンターから、あなたの足音が聞こえてくるのを待っている。
-fin-
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