showcase 035 6/6
手を伸ばした先、何も知らない顔で小さく寝息を立てる身体の下に腕を潜らせる。今日1日の喧騒なんて、嘘のような静けさがここにはある。
思い出されるのは、疲れきってソファーで寝ている俺の髪を撫でる、やけに優しい手つきに気づいてしまった時の、なんとも言えないくすぐったさ。
起きるに起きられない、…いや、起きたくない。もう暫く目を瞑っていたい。許されるならずっと、この温かさに触れていたい。
――お前も今、そんな風に思ってくれていたらいい。
どうってことのない仕草の中に込められた、優しさと愛しさに、気づいてくれてたら。
風惑う朝、止まり木に揺られる夜。どれだけ迷っても帰ってこられる、心から安心できる場所が、互いの傍にあればいい。
見下ろしたお前の伏せた睫毛が小さく揺れる。その瞬間を、俺は見逃さずに心に焼きつける。
それってとても幸せなことなんだって、わざわざ言わなくたってお前も知ってる、なぁそうだろ?
俺ならここにいる。
お前のことを気にかけてる俺がいるってこと、知っててくれたら、それでいいよ。
抱き上げて暫くそのままでいると、お前はそろりと身じろいで、俺の胸に頬を擦りつけた。
今感じているこの気持ちが、なかなか忘れられるものじゃないんだって。結構な頻度で思い出しては、照れくさくなるものなんだって。
…どうしようとか思ってても、今更だぞ?
そういうのを全部わかった上で、俺はこうしてるんだから。手を離す気なんて、全然まったくないんだから。
気恥ずかしいのは俺も同じで、ドキドキしてんの、伝わってるだろ。
俺たちは、今までも、それから多分これからも、ずっと。結局お互いさまなんだよ、バーカ。
寝たふりのお前の、柔らかい体温を丸ごと確かめて。
ここからまた飛び立つ朝まで、お前にとって1番の止まり木でいてやるから。な。
俺は抱きしめる腕に力を込めて、ゆっくりとリビングを後にした。
-fin-
[theme : おもい×あいかわらず]
10sites joint project 『君を恋ひぬ日ぞなき』vol.2
deviser ヒロコ@【五鍵】
≪ back
≪ showcase
≪ menu
≪ home