star sugar 011 1/1




ver.11.1

温めすぎたミルクの、
上に張った膜が嫌い
コーヒーの粉もココアの粉も
全部全部包み込んで邪魔しちゃう
あの白くて薄い膜が嫌い
温めすぎたミルクに溶けきらない、
想う気持ちの、優しい甘さが
あなたと私を隔てるもどかしさに
とてもとても似ているから、嫌い


ver.11.2

緩んだ寒気で、
窓際に置いていた雪うさぎが泣いた
赤い目を腫らして泣いた
優しく抱きしめられたのが
嬉しいのに、嬉しすぎて怖くて
静かにそっと消えてしまえたら、と
みっともなく溶けてしまう前に
だからそっと消えてしまえたら、と
音を立てずに涙をこぼした


ver.11.3

さりげなく繋いだ手で
あなたが掴まえて離さないのは
私の右手じゃなくて
私の左手でもない
大きな手に掴まえられて温むのは
私の右手じゃなくて
私の左手でもない
それはただ、
あなたから逃げ出そうとしていた、私の心


ver.11.4

慌ててブーツを履いて
玄関を出たところで
薫りを纏い忘れたことに気がついた
私がそこにいなくても
私を思い出させる甘さを
あなたをだんだん侵食して
私じゃなきゃと錯覚させる甘さを
小道具に頼らずとも
そのうちに手に入れてみせるけど


ver.11.5

夢の中では泣いていた人が
隣で浅い呼吸を繰り返している
表面上は穏やかな寝顔が
俺が知らないところで歪むのだと
やけに悲しい夢だった
起こして抱きしめてやりたくなって
手を伸ばした先で、寝返りがひとつ
そうやって
無意識でも拒絶する強さが恨めしい
単なる俺のエゴを
押し付けても受け入れない強さが
恨めしくも、ひどく愛しい




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