star sugar 015 3/5




ver.15.3


 別れに直接的な原因などなかった。
 ただ、ひたむきに想い続けることに疲れてしまった、それだけだった。
 淋しいとか好きだとかそういうことを言わない男には、
 自分が必要とされているのかを確かめる術がなかったから。
 ――だからだろうか、目の前で皮肉にゆがむ唇を、むしろ好ましいとさえ思ってしまったのは。

「…アンタに『お前』って呼ばれる筋合い、ない」

 私に同意するように、グラスの氷がカラリと鳴った。
 偶々隣に座ったその男は、煙草を咥えたままで、私を見て哂う。
 …喉の奥にこもるような、そんな声が心地いいなんて思ったのは、気のせいだ。
「お前、ほんっと素直じゃないな」
「うるさい黙れ」
「…『黙れ』、って指図される筋合いなんてのも、ないけどな」
 にやにやとゆがむ唇が吐き出した煙が、私とは反対の方向に流れて行った。

 髪を切るなんて馬鹿らしいと、せめてお酒でも飲もうと思って立ち寄った店のカウンター。
 恋を失ったばかりの痛みが、煙草の煙に流されて別の物になろうとしているのを、私は不思議な気持ちで見ている。




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