collabo 001 1/1




『君の名は―――』


 佐倉大本営研究所、略して秘研に忍び寄る禍々しい黒い影───

 その夜、佐倉大本営研究所所長コードネーム:ダークグリーンは何時ものようにデスクワークに追われていた。
 部屋のライトはついておらず、真っ暗な所長室で唯一の光源と言えばパソコンのディスプレイのみ。
 その光に吸い寄せられるように二本の白い腕が伸び、男の背後から怪しく絡み付く。
 めずらしく恋人が甘えに来たのだろうか?
 そんな事を一瞬考えてしまったがその考えはすぐ払拭された。
 なぜならその爪に塗られていたのは真っ黒なマニキュアだったからだ。
 サーモンピンクの爪はいつも美しく整えられているが間違っても黒のネイルなんて塗らない。
「誰だ!!」
 ダークグリーンは腕を振払い後ろを向いた。
 そこにいたのは黒い振袖を着た黒髪の美人だった。
 遊女のように胸元をはだけさせているが、その胸は恐ろしい程貧弱だった。発展途上アイリス以下だ。
 こんなに乳のない女も珍しい。
 常日頃参謀の豊満な乳房に見なれていた所長はついまじまじとその胸元をみつめてしまった。
 が、すぐ我に返り謎の振袖美人に問いつめた。
「何者だお前は?秘研のセキュリティを突破してどうやって潜入して来た!答えろ!」
 美人は紅を引いた唇を軽く釣り上げるとダークグリーンの耳元で艶っぽく囁いた。

「メルメルメ〜」

 ダークグリーンの頭の中が真っ白になる。
「メルメルメ〜。メルメルメ〜」
「あの…スパイとかじゃなくて…?」
「メルメル!メルメル!」
「流石の新手のイタズラか?」
「メルメルメルメルメルメルメ〜!!」
 ちっとも言葉が通じない…。
 お互いそれに気がついたのか、暫しの沈黙の後、美人の方から口を開いた。
「なンでウマゴン語が通じナいですカ!!」
「人間語しゃべれるんじゃないか!初めから喋れ!!」
「佐倉大本営研究所所長コードネーム:ダークグリーン、いや本名マクシミリアン・シュナイダー!!
 仮にもシュナイダーを名乗る者ならウマゴン語の一つモマスターしてオクデすよバーカバーカ!!」
 美人は神をも恐れぬ捨て台詞を吐き闇夜に溶けていった。

 そして翌日
「おはようございます所長」
「あぁアイリス。つかぬ事を聞くがウマゴンとはなんだ?」
「あぁウマゴン。『金色のガッシュ』ってマンガに出て来る子馬の形の魔物キャラなんですけどとってもかわいいんですよ」
 ほらコレです、とアイリスが携帯のストラップについた子馬の人形を見せた。
「そのウマゴンとやらの鳴き声はまさか…『メルメルメ〜』じゃないか?」
「うわぁよく知ってますね所長。
 あ、そういえばウマゴンってニックネームで本名はシュナイダーっていうんですよ。所長と同じですね──ってアレ所長どこいくんですか?」
「本屋だ」
 それ以降、所長室でこっそり少年マンガを読む所長の姿を見た者がいたとかいないとかいう話。


 -fin-


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