collabo 007 1/1




『君の名は―――4』


 喫茶店【RHAPSODY】のドアベルが涼しげな音を立て、店内にいた誰もが首を向けた。
 入って来たのは所長である。
 いつもなら女性所員の憧れの眼差しを一身に向けられる彼だが、今日は全所員の好奇の目線が矢のように背に刺さる。
 それもその筈、いつもはビシッと決めている髪もスーツもヨロヨロのボロボロだからだ。
 おまけに疲れた顔の彼方此方に引っ掻き傷。
 背中にある愛の引っ掻き傷が消える事がないのは知っているが、顔の引っ掻き傷は明らかに愛憎修羅場があった証だ。

 まさか、噂は本当だったのか!?

 店内でヒソヒソ小声が立つのに気付く事無く、所長はテーブルに掛け、いつものようにコーヒーを注文する。

 昨日は散々だった…
 あらぬ浮気の疑いを掛けられ、サーモンピンクに一方的に責めよられて……
 それもコレも全てあの謎の侵入者のせいだ!!
 くそう、こうなったらセキュリティを全面強化だ!!なめんな秘研!!
 意地でもアイツを捕まえてやる!!!

「お待たせ」
 テーブルの上にコーヒーと見かけないケーキが置かれる。
「何をカリカリしてるのか知らないけど、あんまり怒ってばかりいると身体に悪いぞマクシム?」
「流石…すまんな」
 親友の気遣いに僅かに顔をほころばす。
「で──このケーキは何だ?私は頼んでいないぞ」
「あ、ソレは試作品。うまくいったら店で出そうと思ってさ。味見役引き受けてくれよ」
 見るとタルト皿の上にイチゴやブルーベリー、季節の果物がコレでもかと言わんばかりに盛り付けられていた。ベースのタルトの上に流し込まれているのは、バニラビーンズ入りのカスタードクリームだろうか?
 見れば見る程食欲をそそる。
「そうか…なら遠慮なく」
 フォークを手に持ち、タルトを一口大に切った瞬間、流石がニヤリと笑った事にマクシムは全く気付かなかった。
 果物を落とさないように慎重にタルトを口に運び、そのまま硬直する。
「やっと気付イタよウですネ…?」
 目の前の流石が奇妙なイントネーションで喋り出した。
「辛ッッ!!このケーキ辛ッッッ!!!
 って貴様まさか!?」
「佐倉大本営研究所所長ダークグリーン、いえマクシミリアン・シュナイダー!
 流石ちゃんの幼なジみ兼親友兼恋人を名乗るなら、流石ちゃんお手製のケーキが本物か偽物かヲ見破れて当然なのれス!!!」
「きさまやっぱりあの時の振袖!!」
 流石の服を着た振袖美人がニヤリと笑う。
 今まで黒の振袖だったから気付かなかったが、こうして洋装で目の前に立たれると本当に流石そっくりである。
 どれぐらい似通っているかと言うと、赤の他人なのに双子のようにそっくりな辻加護レベルだ。
「ちなミにそのおケーキ様はワタクシの特製!!あやちゃんに教えてもライなガら一生懸命作ったデすよ!!」
 ウエイトレスのあやの作るケーキは下手したら店長の流石のそれより旨い。
 そのあやに習っていながら、ドコをどうしたら果物まみれのケーキをこんなに辛く出来るのか。
「…何を勘違いしてるのか知らないが私の恋人はサーモンピンク1人であって、流石とは何も───」
「ひどいわマクシムー!!」
 厨房から本物の流石が泣きながら飛び出して来た。
「こんなに尽しているあたしよりもあの巨乳女の方がいいなんてー!巨乳なんてねぇ、老化と共に重力に負けて垂れるのよー!!」
「流石ちゃんカワイソー」
 流石は顔を覆って盛大に泣き始めた。美人も慰めるように流石の背中を撫でる。
 しかし、二人の口元は明らかに笑っていた。
「お前らわざとやってるな!?おい流石、コレは一体どう言う事だ!こいつは侵入者──」
 マクシムの目が僅かに泳ぐ。
 流石と謎の美人はよりによって全く同じデザインの服を着ていた。
 コレではどっちがどっちだかわかりゃしない。
「わからなーい?」
「どっちがどっちかマクシムにはわからなーい?」
 二人はゆらりと立ち上がり、手を繋いでグルグル回りだした!
「「♪ちゃっちゃらっちゃちゃっちゃらっちゃ」」

 ピタッ

「「どっちが流石ちゃんだ〜?」」
「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 頭を抱えるマクシムの回りを、二人は寿司太郎のCMソング(ダブルユー出演中)を歌いながら延々回り続けた。


 -fin-


special thanks for 相沢友弘@【NEW WORLD(仮)】
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