collabo 008 2/2
『2005年1月28日のキャラバンの話』
「あーもうマクシミリアンシュナイダーは全くワかっちゃイないのでス!!」
そういって黒の振袖美人はティーカップをテーブルに叩き付けた。
「どうした。今日は随分と荒れているが」
向かいで分厚い書物を読みふけっていた黒髪の少年が顔を上げ、眼鏡のレンズに掛かったお茶を白衣で拭き取った。
その瞳の色はガラス玉のように無機質な感のある薄い水色だ。
「ちョっと聞いて下さイよマクシミリアンシュナイダーってばマジありえなインデすけどー!!」
美人はカップの中身をまき散らしながら喚き立てた。
「おたヨり案内をする時は、画面下辺りのアリもしない住所テロップの周りを指で囲むのがフツー正しいデシょー!!
だのにマクシミリアンシュナイダーったら自分の頭上にある滅入るボックス指差しタンですよ!?
ソれはインフォメーションとして正しクアリません!!マスメディア媒体を使うなラ頭上の滅入るボックスより画面下の空想住所テロップを!!」
「あーはいはい」
妻のパート先の愚痴を適当に聞き流す夫のごとく、少年は眼鏡をふきながら適当に相槌を打った。
この振袖美人の話は常に支離滅裂だし、真面目に相手にすれば常に自分が理解に苦しむ事を少年は良く知っているのだ。
「全くコレだから最近のミソジは……って、チょっとアなた聞いてルノ!?」
「聞いてる聞いてる。マクシミリアンシュナイダーは三十路なのだろう」
自分で口に出して、少年はふと考える。
「最近の三十路?マクシミリアンシュナイダーって、あのマクシミリアン・シュナイダーの事か」
「さっキカラそう言ってるデしょう」
美人が無い胸を張って答えるが、余りの訛りの酷さに少年は全く気付けなかった。
「マクシミリアン・シュナイダーといったら古代文明時代後期の人間だぞ。どう少なく見積もっても3000年も前の話だ」
「ソウなンでスか?」
「そうなんだよ。
僕も子供の頃一度あった事はあるが、その時マクシミリアン・シュナイダーはもう老人だった」
「ワタクシのシってるマクシミリアンシュナイダーは現役のミソジです」
「佐倉大本営研究所初代所長で、引退後は年甲斐も無く老夫婦揃ってベタベタして教育上に悪かったのを記憶している」
「ベタベタはシてましたケど、ワタクシの知ってるマクシミリアンシュナイダーはまだまだ現役デすよ?」
「隣ではもう一人妙な老人がはべっていたが」
「そレはサスガちゃんですっ!」
「なぜそこだけハッキリ答える」
それにしても話が噛み合わない。
「なぁ、僕は一応正当な時間の手続を踏んで今この時代にいる訳だが……」
「ワタクシむずかスぃお話ワカランチン」
首をひねりながら菓子を貪る美人の為に、少年は理解しやすい言葉をチョイスした。
「じゃあ質問を変えよう。
お前は最近どこであそんでる?」
「あ〜…う〜……」
美人は口の中の菓子を飲み込み、そのまま口を閉ざした。見れば白い肌に冷や汗もかいている。
「ヲトメのヒ−ミ−ツ−!!」
美人は振袖を翻してさっさと逃げ出してしまった。
「あっ、待てまだ質問は終っていないぞ」
少年が呼び止めるその間にも、黒い振袖は見る間に小さく遠ざかっていく。
「逃げられたか……まったくどこで何をしてるんだかあの徘徊老人め」
少年は小さく呟くと再び読書に戻るのだった。
-fin-
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