collabo 013 1/2
『下克上』
「♪あなたがワタシにくれたものッ、キリンの逆立ちしたピアスッ
あなたがワタシにくれたものッ、フラッグチェックのハンチングッ♪」
謎の振袖美人は上機嫌に歌いながら自室の扉を開けた。
「たっだいマなのデす〜」
騒がしい登場であるにもかかわらず、同居人の少年は振袖美人に見向きもせずに、テーブルの上に細かな部品を広げて無言で何かを組み立てている。
「うゥ〜、オモチャなンカで遊んでなイデこレヲミるが良いのデす!」
振袖美人はテーブルの上の部品を払いのけ、袖の下からバサバサと紙きれを降らせた。
「人の作業中になんて事するのだお前は」
少年はやっと顔をあげて、眼鏡のレンズ奥から振袖を睨みつけた。
「ワタクシにカマってクレないアナタがわ〜ル〜い〜」
部品がなくなったらお前のせいだ、口の中で呟きながら少年は紙切れを一枚手に取った。
『謎の振袖美人に一票!』
更に別の紙には『ウワサの振袖美人を是非見たい』などと書かれている。
「なんだコレは」
「票デす」
振袖美人は平たい胸を張ってそう答えた。
記入済投票用紙。それは少年にもすぐわかった。
問題はその投票用紙をこの振袖美人が一体どこで手に入れたのかと言う事だ。
実はこの振袖美人と少年、ホームグラウンドではそこそこの知名度があり、人気投票にもノミネートされている。
そこの投票箱から振袖が自分の分だけ抜き取ったとは考え難いし、大体投票用紙そのものからして既に違っている。
では、これは一体…?
「ワタクシが集めて来たこの投票用紙ヲまとめテ突っ込めば、人気投票の王者なんて一殺なのデす!!」
用紙の数は少年の目分量で見る限りザッと40枚程。実際数えてみればもっと多いかも知れない。
これだけの票数が一遍に入れば間違いなく人気投票一位に輝くだろうが…
「投票用紙の違う物は無効票扱いだぞ」
「えぇ〜?」
無情にもそう告げる少年の言葉に振袖美人が唇を尖らせる。
「せっカく正当法で手に入レたデすのにぃ」
「正当だろうが不正だろうが定められた用紙以外の投票は認められないと言っているだけだ。
大体お前はどこでそれを集めて──」
言いながら少年は長い振袖の袂に目をやり、レンズ奥の目を大きく見開いた。
黒地に揚羽蝶の描かれた長い振袖は、蝶が布地から抜け出ようとするようにボスンバスンと蠢いている。
「動物デモ紛れましタかね?」
振袖美人はのほほんとした表情で言いながら長い袖を振り回した。
中から出てきたのは食べかけの菓子、可愛らしいぬいぐるみ、化粧品や衣装などの変装グッズに暗殺用の小型武器の数々、そして───
ごろん。
最後に転がり落ちて来たのは小さな赤ん坊だった。
しかも落ちて来た時に思い切り頭を打ってしまったようだ。赤ん坊は最初は打った頭を押さえてこらえていたが、やがて火の付いたように泣き出した!
「あああああああああん!!!
かーりょあちゃーごんんしちゃああ〜うああああああああああん!!!!!!!」
「くっ…言語解読不能!超音波兵器か!!」
「ワタクシ戻して来マす!」
振袖美人は泣き止まない赤ん坊と投票用紙を袖の下に突っ込むと急いで部屋を出て行ってしまった。
振袖美人が走り去った後になって少年はふと気づく。
そういえばあの投票用紙の出所を聞いていない。
「また逃したか…」
先日のワインの時も説教途中で結局逃げられてしまった。
次こそは逃げられないように、少年は部屋に罠を張る準備をはじめた。
-fin-
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