collabo 017 2/2
「どうですか?信用して頂けましたでしょうか?」
「…私の姿で彼に妙な事しないでしょうね?」
「不安でしたら付いて来ても構いませんよ?」
余裕たっぷりに微笑う男に、サーモンピンクはカバンからキーを取り出し男の手の平に乗せた。
「わからない…」
仕事で疲れた身体を引きずって、佐倉大本営研究所所長・ダークグリーン事マクシミリアン・シュナイダーは自宅マンションへ戻って来た。
とはいってもシャワーを浴びて、そのままベッドで仮眠をとって、夜明けとともに研究所に向かう。
ココ何日かはずっとそんな日が続いている。仕事が忙しいのだ。
オフィスラブなので恋人であり参謀のサーモンピンクとは毎日顔を合す事はあれど、彼女も自分の抱えているプロジェクトが忙しいらしく、お互いの逢瀬もままならない状態だった。
濡れた髪を乱暴にタオルで拭い、疲れた身体に任せるままにベッドにダイブする。
寝返りを打って見上げるのは天井だ。
「わからない…」
天井を見上げ、もう一度呟く。
「貴方にもわからない事があるの?」
首筋をなぞる細い指の感触と耳に掛かる甘い吐息。
マクシムは一瞬気を張り詰めたが、聞き覚えのある声に気付くとすぐに緊張を解いた。
「来ていたのか…」
「驚かせようと思って、ずっと隠れて待っていたのよ」
声のする方に顔を向けると恋人のサーモンピンクが笑っていた。
仕事中に見せる微笑ではなく、自分にだけ見せてくれるあの笑顔だ。
「寂しかったのは私も同じなの」
新着したのだろうか、赤い下地に黒のレースの付いた下着姿で甘えた声を出す彼女に、マクシムの顔も思わずゆるみ、滑らかな腰のラインに手を回す。
「ねぇ、わからない言って何?仕事の事?」
「いや大した事じゃないんだ、気にする必要はない」
「貴方の事ならどんな小さな事だって知りたいのよ。ねぇオネガイ」
本当は今スグにもコトに及びたいのだが、可愛い彼女のオネガイを聞かない訳にはいかない。
「いや、本当に大した事じゃないんだ。ただあの振袖美人がもう一ヶ月以上来ないから、また何かよからぬ事でも考えているのではないかと思ってな……。
今はまだ大した被害は出ていないが、それでも侵入者である事には変わりない。
一体何の為に研究所に侵入しているのかも不明だし、今の所は単独だがどこか外部にウチの情報を流しているのかも知れない。仮に侵入ルートが外部に出回れば更に多くの侵入者が来るだろう。
唯一の手がかりはあのウマゴン語とシンダル語、あとはマンハッタンラブストーリー。それが奴の身元を探る為の手段になると思うのだが───」
「なによ、ベッドの上で…それも私がいる前で他の女の話なんてしないでよ。天井なんかじゃなくて私を見て」
サーモンピンクが腕を絡ませ、マクシムの顔をその豊満な谷間に埋めさせる。
柔らかな温度と甘い匂い。マクシムはうっとりと目を閉じかけたが、すぐに違和感を覚えて彼女のからだを押し戻した。
「どうしたのマクシム?」
「サーモンピンクじゃない…お前は誰だ!?」
「やだマクシムったらどうしちゃったの?あたしがあたしじゃないなんて───」
「確かに顔も声も身体も良く出来ていると思う。肌の感触まで彼女そのものだ」
だが、と加えてマクシムは不敵に笑う。
「人間には匂いと言うモノがある。どんなに香水で上辺だけの香りを付けてもその人間本来の匂いと言うものはなかなか消えるものじゃない。
だが、オマエの身体からはサーモンピンクの香水の香りはしても人間本来の匂いと言うものが全くしないのだ。そうまでして体臭を消すと言う事はよほどの手練だろう。
他の人間なら騙されただろうが化ける人選を間違えたようだな!!彼女本来の香りも知り尽したこの私を相手にしてサーモンピンクに化けて騙そう等と100年早いわ!!
答えろ、貴様一体何者だ!!何の為にサーモンピンクの姿を使ったのだ!!」
サーモンピンクの姿をした女はさして悪びるわけでなく、栗色の髪をかきあげた。
「ちなみに彼女本来の匂いと言うのは?」
「そりゃあオマエきまっているだろう。たとえるなら深紅の薔薇の蕾が花開く瞬間の瑞々しく甘い香りが貴婦人のごとく───」
ベッドの上で流水のごとく語り出すマクシムを差し置いて、女は白い壁の一端に手を掛けて思いきり引っぱった。
まるで忍者漫画のように壁紙がめくれ、その中から本物のサーモンピンクが現われる。
「お疲れさまでした。よくガマンできましたね。彼の異変の訳と貴方への愛の深さがこれでわかったでしょう?」
眉間に皺を寄せたサーモンピンクに、女はにこやかに釘バットを手渡した。
彼女は無言でソレをうけとり渾身の力を込めてマクシムの頭に振り降ろす!
「マクシムの馬鹿ァ!!私の体臭まで知り尽してるとかそんな恥ずかしい話他人の前でしないでちょうだい!!」
白い壁には釘バットを振り回す鬼のようなサーモンピンクと、やられる一方のマクシムのシルエット。それと大輪の深紅の薔薇のような返り血が花開いている。
「自分の事は何もかも知っていて欲しいのが女心トいうヤツだけど、流石に体臭マでは…ねェ?」
女は残劇を暫く眺めていたが、大きな溜め息とともに顎に手を掛けサーモンピンクのマスクを剥ぎ取る。
その下から現われたのは長い黒髪と黒い瞳───そう、あの振袖美人の顔だった。
「オ後がヨロシいようで」
全く宜しくない惨状を置いて、振袖美人は下着姿のまま悠々とドアから外へ出て行ったのだった……
-fin-
special thanks for 相沢友弘@【NEW WORLD(仮)】
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