collabo 024 1/1
『希望の轍』1
嵐が明けた翌朝と言うのはなんて爽やかなのだろう。
科学者としてその現象を説明する事は容易いが、実際言葉にすると窓から差し込むこの光も頬を撫でる風も全て世界に設定されているような気がして、彼は敢えてそれを頭から払拭した。
昨晩は雷に託つけて仕事中だと言うのに愛しい恋人が甘えに来て、その甘える姿が恋人の欲目を抜きにしても非常に可愛らしく、彼はそのまま自宅に持ち帰り久々にお互いの愛を堪能した。
彼の名前はマクシミリアン、その愛しい恋人の名前はサーモンピンクという。
昨日はシャワーも何もナシに情事に突入してしまったからカーテンは開けっ放しだ。そのお陰で普段よりも少し早く目覚めてしまったマクシミリアンは、頭からシーツを被って今だ夢の中にいる恋人の身体を優しく撫でた。
ベッドサイドに置いてあったオーディオが優し気な女性の声で歌いだす。
曲は確か『lovin'you』ジャネット・ケイが歌うマクシミリアン青春時代の名曲だ。
オーディオは設定した時間になると自動的にラジオが流れるように設定してある。コレが偶然である事は勿論わかっているのだが、それにしても今日はいい仕事をするじゃないかラジオ局め。
爽やかな朝、ムードのある曲、身体のあちこちに残る情事の跡と、自分の隣で生まれたままの姿で眠る無防備な恋人。
偶然と言うべきか必然と言うべきか。早朝の甘い空気にほくそ笑みながらも今日の仕事におくれる訳に行かないのでマクシミリアンはシーツの上からゆるゆるとサーモンピンクの身体をゆさぶった。
「おい、起きろ。もう朝だぞ?」
「ん〜…マクシムあと5分だけェ…」
寝ぼけながらシーツの中で丸くなる恋人に彼は苦笑をこぼした。
可愛い恋人の頼みなら本当は幾らでも聞いてやりたいのだが、お互い同じ職場である以上そうは言ってられない。
それにしても……マクシミリアンは自分の手をじっと眺める。
起き抜けで、しかも昨日さんざん声をあげさせたからって、彼女の声はこんなに低い声だっただろうか?
掠れているとかの問題じゃない。これではまるで二日酔いのおっさんだ。
しかもシーツ越しに触った彼女の身体はひどく触り心地が悪かった。
昨日は余す事なく彼女の柔肌に触れたのだから良くわかる。サーモンピンクの身体はシーツ越しとは言えあんなにゴツゴツしていない。
「サーモンピンク!?」
まさかとは思いながらもマクシミリアンは彼女のシーツを無理矢理剥ぎ取った。
シーツの中で丸まっていたのは───彼の愛しい恋人ではなかった。
絹糸のように滑らかな光沢のある栗色の長い髪は、短い銀髪の剛毛に変わっていた。
女性特有の白く柔らかなボディラインの美しい肉体は、男のゴツゴツとした褐色の筋肉に覆われている。
今のマクシミリアンと同じく、全裸で寝ている所がまた心臓に悪い。
マクシムとただ一つ違う事と言えば、衣服は一切身に付けていない癖になぜか黒いサングラスを掛けたまま寝ていると言う所だろうか。
「だっ、誰だぁあああああああああ!?」
シーツの中にいた物体を凝視した後、マクシミリアンは早朝であるにも拘らず大声を上げた。
「どうしたのよマクシム? 朝っぱらからご近所迷惑になるじゃない……」
全裸で寝こけていた筋肉質の男はムクリと起き上がりマクシミリアンを見上げてにっこりと微笑んだ。
「おはようマクシム、いい朝ね」
その後男は首を傾げて2〜3回咳払いをする。
「あ、アラ? 何か声がおかしいわね? 風邪でもひいたかしら?
マクシム、あなたもいつまでもそんな格好してないで着替えたら? それともシャワー一緒に浴びる?」
姿は違うがその仕草、口振り、笑い方。マクシムはそれで直感した。
アレはサーモンピンクだ。
どう言う訳か姿は一晩で豹変してしまったが、間違いなくあの男は自分の恋人だ。
長い付き合いであるのも勿論なのだが、何度も身体をあわせて来た恋人としての愛の直感である。
以前もマクシムは彼女の偽者を見破った事がある。最初は驚いたものの恋人の別の姿だとわかった途端、筋骨流々の全裸男に対してマクシムの胸の奥から愛情のようなものがふつふつと湧いて出る。人の心は不思議である。
「マクシム?」
彼女は自分自身の異変に全く気付いていない。
そりゃそうだろう。一晩で性別が変化するどころか元の身体の面影が全くなくなってしまうなんて、一般常識のある大人は勿論非常識の塊である秘研所員ですらそんな異常事態思い浮かべない。
男、マクシミリアン・シュナイダー。今の使命は彼女の異常事態をいかに彼女を傷つけないように教えるかである。
サングラスのみ身に付けた全裸の男の外見のサーモンピンクをチラチラ見ていると、サーモンピンクは困ったように両胸を隠した。
「や、やぁねぇマクシム。そんなに明るい所で見られると恥ずか…しい……」
だが、マクシムの眼が普段と違う。どうも下半身のほうを集中的に凝視されている気がする…。
彼女もまた恋人の態度がいつもと違う事に気付いた。マクシムに釣られるようにサーモンピンクも自分の下半身に視線を落とすと
「ぎゃああああああ!!! わ、わわ私に生えてる! ついてる!」
そしてマクシムの股間に目をやって
「勝った!! 私の方がでーかーいー!!」
「言うなぁ! 自分の彼女より小さいなんて男としてのプライドがーっ!!」
サーモンピンクはベッドの上でガッツポーズを取り、マクシミリアンは本気で悔しがった。
二人とも相当錯乱している。
これだけの異常事態だ。まぁ無理もないだろう。
to be continued...
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