collabo 025 1/1
『希望の轍』2
いくら恋人同士とは言えいつまでも全裸でいる訳にいかないだろう。
一先ずなにか服を着よう。でないと1日が始まらない。
錯乱状態から戻りつつあったサーモンピンクの提案により、二人は着替えを済ませてベッドの上で向い合せで正座していた。
マクシムは何時でも仕事に行けるように、ペンシルストライプの入った黒のスーツと同色のネクタイ。
サーモンピンクはというと、昨日着ていたアッシュグレーのタイトスカートスーツの上下。
ちょっとした着替えはあらかじめ何着かマクシムの自宅に置いてもらっているので、昨日のシャツは洗濯機に突っ込んで今日はすでに洗濯済みの淡いピンクのシャツを着込んでいた。
だが、今のサーモンピンクは長い栗色の髪の美女ではない。剛毛銀髪、褐色の肌に筋骨隆々の男である。
いつもなら彼女の身体のラインにぴったりとフィットするタイトスカートは、固い筋肉の太い腿によりファスナーがしまらずスカートの布はすでにはち切れそうになり、細い腕のジャケットに筋肉で盛り上がった太い腕を無理矢理通したものだから肩の縫い目がすでに破れてしまっている。
女性である時も豊かな胸の持ち主だったサーモンピンクだが、今日はまた違った意味で巨乳な為ピンクのシャツのボタンは閉まらずセクシー全開、その為御丁寧にも鍛え上げられた大胸筋を薄青のレースのブラジャーカップに無理矢理収めようとしている様子がありありと理解出来てしまう。
そして、顔面にはなぜかサングラス。思えば男の身体に変化した初対時もサーモンピンクは全裸サングラスだった。
なんなのだこのサングラスは? 眼鏡は顔の一部と言う眼鏡屋の宣伝文句は知っているが、サングラスは眼鏡じゃないだろう。サーモンピンクは気付いていないのか?
いや、この異常事態は彼女の身に起こった事なのだ。幾ら表面上は冷静を保っているとは言え、心中ではまだ動揺しているのも無理はないだろう。
とにかくこのサングラスと言い、動揺してサイズのあわない女性用スーツ+ランジェリーに着替えてしまった事といい、今のサーモンピンクは全裸サングラスの時より怪しさが上がってしまった。
「あの…サーモンピンクさん」
緊迫する空気の中でマクシムは姿勢を正した。
「な、なんでしょうかマクシミリアンシュナイダーさん」
サーモンピンクも釣られて敬語で恋人に答える。
「服は私の私服を貸します、おろしたての私の下着もお付けし…いえ差し上げます。ですから今は何卒その服から着替え直しては頂けないでしょうか? それとそのサングラスを外して頂くとなおの事有難いのですが」
男マクシム、今の使命は彼女を傷つける事なく自然な姿に着替えさせる事だ。
「サングラス…? どうりで朝なのに視界が暗いと思ったわ。
ダメねぇまだ化粧もしてないから鏡も見ていないし。いつまでもスッピンでゴメンなさいねマクシム」
「け、化粧等しなくても結構ですサーモンピンクさん! 着飾らなくともあなたは十分お美しい! ありのままのあなたを愛してる!!」
化粧をすると言い出すサーモンピンクをマクシムは無理矢理制止した。
今のその姿でさえもう限界だというのに、加えて化粧までする気だったのか。
身体の性別は変わってしまったが、どこまでも女性らしい自分の恋人にマクシムは泣きそうになった。
「嬉しい事言ってくれるじゃないの」
マクシムの制止を言葉通りの称賛と受け取り、サーモンピンクははにかみながら黒のサングラスを外した。
サングラスの下にあったのは蛇のような金色の双眸だった。
男の顔にはまる蛇の目。マクシムはそれを異質と感じながらも同時にその金色の美しさに引き込まれていった。
「好きよマクシム。私もありのままのあなたが一番好き。世界の誰よりも愛してる」
金の目がキラキラと輝きマクシムを魅了する。
サーモンピンクの低い声が頭の中で甘く甘く響いてマクシムの心を縛り付ける。
この高揚感は彼女が女性の身体だった時よりも数段上をいっていた。
その言葉にうっとりもしつつ、『これで身体が今までのサーモンピンクだったら最高なんだけどなぁ』と思った瞬間マクシムは我に返った。
「うおおおおお!」
マクシムはサーモンピンクのもっていたサングラスを奪い取り、それを無理矢理掛けさせて金色の妖眼を覆い隠した。
「きゃっ、なにするのよマクシム!? サングラスを外せっていったり無理矢理装着させたり」
「好きですサーモンピンクさんそのままのあなたを愛してるけどサングラスだけはパンツ以上に厳重装備をして頂きたい!!」
マクシムは自らの中にあるピンクフィルターを払拭するように早口で捲し立てた。
サーモンピンクも彼の鬼気迫る表情からただ事ならぬ何かを察したらしい。
「な、何だかわからないけれど、サングラスをとったらいけないのね? わかったわ。
それといつまでもこのスーツだと動きづらいから、お言葉に甘えてあなたの服を着させてもらうわね」
それだけ言い残してサーモンピンクはノシノシと重圧な足音を上げて別室に向かっていった。
「危なかった…」
サーモンピンクの姿が見えなくなったところで、マクシムは脱力するように息を吐いた。
あの金の目とあってしまうと、視線を逸らしたくとも逸らせなくなってしまう。
あの低い声で愛を囁かれると、女の身体だった頃以上にその体を欲してしまう。
それは恋人の魅了で落ちたというよりもあの眼と声で『催眠状態に落ち入った』といった方が正しいだろう。
多分彼女はその事を全く意識していない。
と、いう事はあの催眠状態はあの体そのものに原因があるという事だ。
とりあえず今の彼女のあのサングラスを外させてはいけない。ついでに言うならなるべく会話をさせないようにした方がいいだろう。何かの拍子に言葉だけで催眠状態になっても困る。
ひとまずココまで分析を終えたマクシムは恋人の体を元に戻す為の次の手を考える事にした。
いずれにしても、まずは職場に行かない事には始まらないのだが………
to be continued...
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