collabo 027 1/2
『希望の轍』4
所長室の床上に、それぞれ向かい合うようにして正座するマクシム、流石、そして巨漢サーモンピンク。
「……」
「………」
「……………」
なんとなく気まずい空気が所長室内に沈澱していく。
とりあえずこの空気を流さねば。流石は喫茶店マスターとして培って来た軽快なトークでその場の空気を変えようと口を開いた。
「えーっと」
「さ、サーモンピンクではない!!」
流石の台詞に無理矢理かぶせるようにマクシムが大声を上げた。
「そうよわた…じゃない俺はサーモンピンクなんてバインボインの美女じゃないゼ! ないんだze★」
「ほら御本人もそうおっしゃってるじゃないか! このお方はホレ、えーとアレだ、アラスカからやってきた紅鮭取り名人の熊坂さんだ!!
この熊坂さんは凄い鮭取り名人なんだぞ! 北海道名物木彫りのクマの置き物もビックリの荒鮭ハンティング振りなんだ、だから流石も是非見習うがいい」
「バウーバウー」
マクシムが顔を真っ赤にして必死の形相で取り繕い、それに併せるようにサングラスの巨漢が四つん這いになって鮭を捕る熊のモノマネをする。
二人の必死のフライングにより、流石の中で巨漢=サーモンピンクは疑いようのない事実へと昇格していた。
このまま突っ込んでもいいのかも知れないが、それだけでは面白くない。
二人が事実を隠しているつもりになっているのなら、このまま自白の方向性に持っていってやろうじゃないか。
流石は表面では至極真面目に、だが心中では悪魔のように笑って相槌を打った。
「へぇ〜えそうか鮭取り名人の熊坂さんか〜。そりゃ俺も是非華麗な鮭ハンティングを伝授して貰わなきゃだな。ところで熊坂さん、こないだ話したBブロックの件なんだけど」
「それならもう資料作って昨日ラプソディーにもってったわよ? あやちゃんに預けたんだけどまだ貰ってない?」
指先でサングラスをクイと上げ、凛とした口調で話す巨漢をみて流石は口の端をつり上げた。
「あー今日あやちゃん午後からなんだよねー。もしかしたら冷蔵庫に資料についての伝言メモ貼ってあるかもしれないし、戻ってチェックしてみるわ。サンキューサーちゃん、相変わらず仕事早いね」
「当然! 私を誰だと思ってるのよ。秘研の参謀サーモンピンク様よ」
そこまで言い切った後で、シマッタと言うように青ざめる。
「ハイサーちゃん自爆〜」
青ざめる巨漢サーモンピンクの肩をバシバシ叩き、流石はコレ以上ない位爆笑した。
「バカ者、せっかくバレないようにフォローしてやったのに」
「フォローになってないのよバカマクシム! なんなのよ鮭捕り名人の熊坂って!」
愚痴をこぼすマクシムの頬に、サーモンピンクは力任せに平手打ちを喰らわせた。
「おぶっ」
太い腕から力任せに振られた平手はマクシムの顔に巨大な紅葉腫れを作るどころか、そのままマクシムの身体ごと吹き飛ばし、更には壁に身体半分をめり込ませる事に成功した。
「キャっ、マクシムごめんなさ〜い大丈夫ゥ?」
男1人を貼り手一発で豪快に壁にめり込ませた後、女らしく内股で恋人に駆け寄るサーモンピンクを見て『今のサーちゃんだけは怒らせてはいけない』と秘かに戦慄した。
「ハハ…サーモンピンクたんはおてんばさんだなぁ…」
それと、顔に紅葉腫れどころか壁に身体をめり込ませたままサムズアップポーズを決めるマクシムの頭の中にも不安を覚えつつ、流石は男らしく急変化を遂げたサーモンピンクに尋ねた。
「とりあえず、どういう事か説明してくれないかな?」
* * *
「なるほどねぇ」
サーモンピンクから話を聞くだけ聞いて、流石は大きく溜め息をついた。
「原因も何もわからないんじゃ、話聞いても意味なかったよ」
「えぇ、私も説明しながら内心そう思ってたわ…」
「前日はとくに思い当たる節はないんだよな? 強いて言うならマクシムとの久々Hくらい?」
「キャっ、やだ流石さんのエッチぃ」
サーモンピンクが照れた笑顔を見せながら、無邪気に剛椀張り手を流石へ繰り出そうとする。
「おっと」
流石は慌ててその攻撃をかわす。
「普段のサーちゃんならともかく、今そんなの喰らったら俺様床にめり込んじゃうよ」
「失礼ね。手加減するつもりだったわよ」
つもりじゃなくて、きちんと手加減して下さいサーモンピンクさん。
あなたの恋人は今だ壁に埋まったままです。
「でも昨日はそれ以外はいつも通りだったわ。いつも通りお仕事して、ラプソディーでお茶して。何も変わらずよ」
「じゃあ……」
科学者ではないものの、流石もそれなりに頭を絞って考える。
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