collabo 029 1/1




『希望の轍』6


「えーソレでは不肖、御厨流石所長代理進行の元、我等が覇王サーモンピンク様の御身を元に戻す為の話し合いを真面目に行ないたいと思いマース」
「「はーい」」
 ビン底眼鏡を掛けて所長室のホワイトボードの前に立つ流石に、同じくビン底眼鏡を掛けた双子兄弟が返事をした。
 心を入れ替えた下僕達の真面目な態度に、サーモンピンクは機嫌を良くして何度も頷いた。
 それとクリ(ニセ)の天然精神汚染攻撃によって、壁にめり込んだまま意識を失い背景の一部となったマクシムにも、お揃いのビン底眼鏡が掛けさせられていた事も記しておこう。
「はーい流石所長代理」
「なんだねクリムゾン君」
「今回も例のごとくあの振袖美人の仕業じゃないかと俺思うんすけどー」
 クリムゾンの言う振袖美人というのは約1年前から研究所内に出没しだした謎の怪人のコトである。
 まるで吉原芸者のように着崩した黒い振袖を身に付け闇の中から現れて、主に所長マクシム相手にかなりくだらない悪戯を仕掛けて帰っていく。
 最終的にマクシムの所に被害が行くように研究員を利用する事はあっても、所長以外の研究員達には基本的に手をだす事はないし、被害を受ける当人以外から言わせてもらえば振袖美人の悪戯なんて微笑ましいものばかりだったので、最初はともかく今では振袖美人のコトなど誰も気にしなくなっていた(マクシム除く)。
「ん〜振袖美人…シェラサちゃんねぇ」
 歯切れ悪く流石が頷く。
「流石さん振袖美人の名前知ってたんスか!?」
「まぁラプソディー組は個人的にお友達の関係だからねぇ? それでも名前と誕生日位しか知らないよ。
 家がドコとかどうやってウチに潜り込んでいるかとか、どれだけ話しても自分の情報は一切出そうとしないもん」
 他の研究員達もわからなかったのに、それだけ知っているなら上等だろう。
「じゃあマクシムの隠し子の調査の話は…!?」
 変装した姿だったとは言え、サーモンピンクも振袖美人本人と接触した事がある1人だ。
 その時は『マクシムに隠し子がいる可能性があるから彼の髪の毛が一本残らず欲しい』と言われた事があった。
「それは単にサーちゃんが騙されただけなんじゃないのかな? 俺の知る限りアイツにそんなのはいないハズだよ」
 振袖美人、シェラサのその口のうまさでどれだけ流石も騙されそうになった事か。
「俺は今回のコトはシェラサちゃん絡みじゃないと思うんだよね。仮にもし絡んでたとしても間接的にとか、本人も知らないウチにサーちゃん変貌の仲介点になっていたとか、せいぜいそんなトコだろうとおもうんだ」
「随分庇いますね流石さん? 個人的な友人だからですか?」
 クリ(ニセ)が微笑する。だがその微笑の魅力もビン底眼鏡によってほとんど台なしである。
「クリ(ニセ)の言う通り、ソレも勿論あるんだけどさ、でもちゃんと根拠だってあるぞ。
 まず、シェラサちゃんは基本的にマクシム以外手に掛けない」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「外見もそうだけど、俺達基本的な部分がにてるから良くわかるんだよ。
 そんでシェラサちゃんがマクシムにしか手を掛けない理由は、シェラサちゃんが何かアクションを掛けた時一番面白いリアクションを寄越すのがアイツだからさ。だからリアクションがアイツより面白ければ俺でも誰でも良かったワケ。
 でも今回はマクシムも被害を受けたけどソレ以上に被害を受けたのは誰だ?」
 双子兄弟の目線が巨漢サーモンピンクに集中する。
「だから今回はシェラサちゃん絡みじゃない。絡んでたとしたら間接的にだ」
と、言う事は今回は振袖美人ではなく、秘研所員達が怪しいと言う事になる。
「それでさっき親父が怪しいっていってたのか…」
「あの博士だったら『どんな美女でも瞬間マッチョダンディー薬』とか『南米ジャングル屈強の戦士と美女の身体を入れ替えちゃうよ〜ん薬DX』とか開発してたとしてももおかしくないだろ?」
「確かに…ウチの父ならばやりかねない……」
 家族なだけに否定しきれない所が逆に辛い。
「私からもいいかしら?」
 今まで所長イスに深く腰を降ろしていたサーモンピンクが手を挙げた。
「何でしょうか覇王様?」
「そう言えばアイリスちゃんも今日いないわよね…?」
 流石と双子はお互いの顔を見合わせた。
「そ、そう言えば…!」
 秘研最年少幹部、アイリス・パープルも妙な薬品開発が大好きだった。
 特にそのネーミングセンスは双子の父親であるパールホワイト博士といい勝負だった。
「そういえば俺、最近アイリスの姿見てないんだけど!」
「いつから!?」
「一週間前…ちょうど親父が失踪した頃からだ!! 学校にも行ってないっぽいし!!」
 アイリスと同年代でなおかつ一番仲の良かったクリムゾンが言うならその話は本当だろう。
 もしアイリスとパールホワイト博士の二人が手を組んでいたとしたら…!?
「ちょっと待って? アイリスちゃんも失踪中だとしたら昨日私が見たのは何だったのよ!?」
「なんだってぃ!?」
「昨日私ラプソディーでアイリスちゃんとお茶したのよ!! そりゃあちょっっっとばかりお肌のツヤがなくて窶れているような気がしたけど……」
 一週間掛けて魅惑のマッチョダンディー薬(仮)を開発したアイリスは、どういう理由か知らないがラプソディーにサーモンピンクを呼び出して、いっしょにお茶を飲むと見せ掛けてサーモンピンクのお茶もしくはケーキに魅惑のマッチョダンディー薬(仮)を盛ったのであった……。
 そう考えると今までの謎の殆どが解ける。動機についてはサッパリだが大体の話が繋がる。
「本人はいないかも知れないけれど、ラボに行けばまだ何か手がかりは残っているかも知れないわ!」
「急ぎましょう覇王様!」
 サーモンピンクを先頭に流石とクリムゾン、そしてクリ(ニセ)の『真面目ビンゾコ−ズ』はアイリスの研究室へと走ったのだった。
 壁にめり込んだまま気絶したビンゾコ−ズ4人目、マクシミリアン・シュナイダーを置き去りにして……


 to be continued...


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