collabo 030 1/2
『希望の轍』7
「ホゥアチャァァァアアア!!!」
ブルース・リーの再来ともいえる怪鳥声を上げて、サーモンピンクはアイリスの個室ラボのドアを蹴り上げた。
鋼鉄製の厚い扉は木片のようにクルクルと宙を飛び、金髪黒髪ツートーンの白衣の男の頭に突き刺さった!
「父さん!?」
「マジでアイリスと手ェ組んでたのかよ!?」
ドアが刺さった上にその重みで潰された男を見て、クリ(ニセ)とクリムゾンの二人が同時に声を上げた。
だが瀕死の父───パールホワイトに駆け寄るどころか、心配する様子すら見せない。所詮息子なんてそんなもんである。
捕獲に難航するかと思われていたが、アイリスは案外あっさり発見する事ができた。
ラボのデスクに突っ伏して、酔っ払いのごとく泣き崩れていたのである。
「ウッウッ…なんであそこでウェルチなのさぁ…」
泣き崩れるアイリスの手元にはコップに入ったブドウジュースと、ジュースの業務用パックが置かれていた。
「アイリスちゃん!? 何があったと言うのアイリスちゃん!?」
可愛がっている妹分のやさぐれ振りに、サーモンピンクは今の自分の外見のコトなどすっかり忘れてアイリスに駆け寄った。
「ギャア誰ですかあんた!? クサッ、加齢臭がするっ!!」
「こんな姿じゃわからないのも無理ないわね。
私よアイリスちゃん、あなたの町のセクシービューティ、サーモンピンクお姉様よ!」
そんなキャッチフレーズ誰も付けていない。
「サー…ちゃん?」
顔を上げたアイリスの眼が大きく見開かれ、やがて段々と憎悪の形相に変わっていく。
「これがサーちゃん…じゃあこの身体の持ち主が今あたしのサーちゃんのバインボインのセクシャルバディに入っていると言うのね!!
本当はあたしがサーちゃんの身体を貰うハズだったのに! あたしのサーちゃんの身体を返してよバカ〜!!」
立ち上がったアイリスは小さな拳でポカポカとサーモンピンクの胸板を叩いた。
「ちょ、ちょっとアイリスちゃん落ち着いて!? ほらウェルチでも飲んで」
サーモンピンクはデスクに置いてあったブドウジュースの入ったコップをアイリスに手渡した。
ソレを受け取ったアイリスは一気に中身を飲み干して
「ブドウの味しかしない〜」
と、空になったコップを両手で握りしめてまた泣いた。
「バカだなぁアイリス、ウェルチはブドウジュースだからブドウの味しかしないのは当たり前じゃん」
「ウェルチは製品名ですよ。たしかオレンジ味もあったハズ」
双子兄弟の場違いなジュース談義はおいといて。
「アイリスちゃ〜ん? 何がそんなに悲しいのか流石お兄さんにお話して欲しいにゃ〜?」
こういう時頼りになるのは年頃の娘を持つシングルファーザーの存在だ。
流石は猫なで声でアイリスに話し掛けると、宥めて透かしてようやくサーモンピンク激変の原因を突き止める事に成功した。
「あ、あたしはサーちゃんの身体が欲しかった…ちょっとでいいからサーちゃんになってみたかったのよ…」
学校で同年代の友人はドンドン成長して大人の身体に変わっていくのに、1人だけ小さく子供のようで何の変化もみられない。
成長期なんだからその内あっという間にキレイになると、研究所の大人達に慰められても所詮そんなの口先ばかりだ。
だってアイリスは知っているのだ。
自分の身体は肉体の成長、とくにバストの成長に関しては絶望的に育たないと言う事を。
16歳でもアイリスは佐倉大本営研究所の幹部である。自分の身体の遺伝子なんて何年も前に解析済みなのだ。
この身体ではどう頑張っても大人っぽくなんてなれない。
姉のように慕い憧れているあの女性のようになれない。
ならいっそ、私があの人になってしまえばいい。
その為になんども理論を構築しなおし、実験を重ね、途中パールホワイト博士と言う良き理解者も得て、そうしてやっと成功したのだ。
身体と精神を入れ替える2色の薬を……。
「効果は永久じゃないけれど、それでも1週間は持つように作ったの。
ピンクの薬はイチゴ味にして、ラプソディのパフェのクリームに混ぜてサーちゃんに投与した。
コレが成功したら所長と身体を入れ替えてあげるって条件で、あやちゃんにも協力してもらったわ。
紫の薬はブドウ味。私はブドウジュースってコトにしてそのまま薬を飲めばいい。
コレで二人の身体はその日の晩に入れ替わる。
私の身体はサーちゃんと、サーちゃんの身体はプリプリぴちぴち現役女子高生16歳の私の身体に入れ替わって、一週間だけだけど青春をやり直す事ができる。
私はこれから一週間テスト期間だけどそんなのは些細な問題よ。
ココまでは完璧だった……それなのに!!」
アイリスは両手に持っていたコップを床に叩き付けた!
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