collabo 031 1/2
『希望の轍/真夏の果実』終章
「スイマセンねぇいイ年して人見知りの激しい子デ。ほらゼノンきゅん出てラっしゃい」
シェラサの後ろから無理矢理引きずり出されたサーモンピンクの身体───ゼノンは小動物のようにキョロキョロ辺りを見回し、この室内にいる数名の中でも特に異彩を放つ自分の逞しい肉体───サーモンピンクを発見すると感極まったように涙した。
「あぅ……俺……俺がいる………俺がいる………!」
「わ、私だわ…私の魅惑の果実のボディが今目の前に!!」
それはゼノンの巨体の中に入ったサーモンピンクも同じだったらしい。見目麗しい自分の身体───ゼノンを発見すると、サングラスの下の金の眼から一筋の涙が流れ落ちた。
二人は一歩、また一歩と互いに歩み寄り、やがて堪え切れなくなったように駆け出した。
「お━━れ━━━!!」
「わ━━た━━しぃ━━━!!」
ゼノンの細い足は軽やかに床を蹴り上げ、その身体を丸ごと受け止めるようにサーモンピンクは自らの太い腕を広げて出迎えた。
「うわぁん、さびしかったよぅ逢いたかったよぅ俺ェ━━━!!」
「例えこのまま世界が滅びの時を迎えようとも、もう二度と離さない………愛してる、私!!」
二人は熱く抱擁を交わしあった。抱き合ったままクルクル回転し、二人の世界を築いている。
二人の周りに花びらの舞う幻影が見えるのは、決して気のせいではないだろう。
「なにこのカワイイ生き物!」
「なにこの男らしい生命体!」
もはやどっちがどっちなんだかわかんないようなラブシーンを、呆然と眺めていたギャラリー達が我にかえって全く同時に驚愕した。
その大声に驚いたゼノンは小さく悲鳴を上げると、サーモンピンクの巨体の後ろに隠れて怯えた小動物のように震えた。
「ハハハ、恐がりさんね。誰も取って喰おうなんて思っていないし、もしそうだとしてもこの覇王サーモンピンク様が守ってあげるから安心して出てらっしゃい」
サーモンピンクはおびえるゼノンの頭を、無骨な指で優しく撫でてなだめてやる。
それがまた逆効果だった。
「カーワーイーイー!この悪魔のおっさんの身体にこんなカワイイ中身が入ってたのか!?
ほ〜らゼノンたんだっけ? ウェルチ飲む? 甘くて美味しいよ〜」
「何でコのヘタレのおっさんの中身がサーちゃンに変わッタだけでコギゃんと男ラシゅーなるデスか!?
ワタクシもののハずみで惚れソウよ!? むしろ抱くがいい!!」
入れ替わった二人の付き添いである流石とシェラサが大騒ぎする中、冷静に事態を見守っていた青年、クリ(ニセ)がぽつりともらした。
「やっぱあんたらわざわざ元に戻る事ないんじゃないですか?」
「「はぃい!?」」
サーモンピンクとゼノンが同時に声を上げるが、クリ(ニセ)はお構いなしに話を続けた。
「だって今までのあんたらはブルドッグみたいなおっさんの身体に可愛いチワワの心が宿っていて、可愛いチワワちゃんの身体に凶暴かつ性欲の塊のメスブルドッグがいたようなモンなんでしょう?
それが今回の事故によって、ブルドッグとチワワの身体に本来入るべき中身が収まった。
それならそれでイイじゃないですか。外見と中身の一致している方が後々の人生絶対楽ですよ。
こちらが貰えるのが可愛いチワワちゃんじゃなくてブルドッグのおっさんなのは非常に惜しいですけれど、こっちは別にブルドッグでも僕らの社会は滞りなく回って行くんだし振袖…いやシェラサさんでしたっけ? あなたがドコにお住まいなのかは知りませんけれど、このチワワちゃんを持ち帰る事であなたの周りになんらかのマイナス面が出て来ますか?」
「ン〜…」
シェラサは細い顎に指をあてて考え込む。
「そりゃこのブルドッグの身体じゃナいと出来ない事はたくさんアルます。デスが次の引き継ぎは既にイルっぽいですからねぇ? 外側チワワたんでも次の世代をキチンと育てさエすればワタクシ的にはOKヨ」
「なんだ、だったら問題ないじゃないですか。なら後は僕が今の状態で完全定着化させる薬を作ればいい訳だ」
クリ(ニセ)はMOを手に取り不敵に笑った。
「えーと、クリ(ニセ)? 言ってる意味がよくわからないんだけど?」
「幹部のくせに頭悪いですね参謀。要はあんた等二人には一生このままでいてもらおうって言ってるんですよ」
「ちょっとまった!」
1人で突っ走るクリ(ニセ)を止めに入ったのは双子の兄弟のクリムゾンだった。
「ブルドッグとチワワをこのままにしとくのは俺も賛成だ。
でも俺はどうせだったらブルドッグじゃなくてチワワの方が欲しい!!」
「俺も!」
クリムゾンの抗議に流石も頷く。
「だってお前良く考えてみろよ? たしかにチワワはブルドッグと違ってココでの仕事が出来ない。だけどそんなの小さな問題じゃないか!!
なぜならチワワは可愛い!! この身体に今まで凶暴なブルドッグが入ってた事実そのものが、重犯罪に思えるような可憐さだ!!
いいじゃないか今までのブルドッグの仕事は俺達幹部が分担すれば!!
所長だって元の外見チワワの中身ブルドッグ女なんかよりも、こっちの方が絶対ホレ直す!!
チワワちゃんは研究所でお散歩したり、時々綺麗な服きてスポンサーのおっさんと豪華な店で美味しいごはんを食べてりゃいい!! こっちのほうがより一層完璧じゃないか!?」
ごはん、という単語を聞いたゼノンの顔が見る間に緩む。
幾ら自分自身料理の腕が玄人はだしとはいえ、元来貧乏性なのだ。
普段は表情を殺しているが、『豪華』で『他人の作った』美味しいモノという言葉に本当は弱いのだった。
「あー、ソレ言ったらワタクシもチワワよりブルドッグのほうがお持ち帰りは都合がイイカも知れまセん。
ブルドッグの身体にメスブルドッグ本能下にある好戦的な部分、そしてメスブルドッグ本来の性能から考えて見るとその身体能力を完璧に使いこなすのに特別時間はいらナイでしょう。
どうでしょうブルドッグ? 本来あなたの今いるソの身体は性能がこの時代の人間の何倍も高いのデす。恐らく今のあなたはその片鱗を垣間見た程度で本来の力の何分のイチも発揮していない。
私と一緒に来ればその本来の実力を惜しむ事なく発揮出来ます。ゾンビやドラゴン、この世界には存在しないヨうな凶暴極まりない魔獣達と毎日楽しく戦えまスよ? あなたのその強靱な身体と頭脳があれば1人で大国を滅ぼす事だって朝飯前デす」
「魔獣とバトル…1人で国攻め…下克上で覇王の座…!」
シェラサの囁きはサーモンピンクの本能をくすぐった。
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