collabo 031 2/2
元の身体には戻りたい。だが今の自分達の目の前には、今までの自分を捨ててしまってもいいとさえ思えるような、全く新しい未来へのレールが敷かれてしまった。
今まで築いた何もかもを捨てて、新しい世界に乗り込むか。それとも───
「……いや、駄目だ」
チワワ、もといゼノンはゆっくりと首を横に振った。
「捨てたら駄目だ。俺はこんな所で1人幸せにはなれない」
ゼノンはたわわな胸元から桃色の液体の入った小ビンを取り出すと、まだ心中揺れ動くサーモンピンクの前に差し出した。
「あんたも…こんな綺麗な人がそんな身体にいつまでも入っていたらいけない。
それは罪人の身体だ。長居をしたらいつか俺のかわりに罪を被る事になる」
「それは…まさかアイリスちゃんの薬…?」
「アイリスという名前ではないが、でも作ってもらった。飲めばもう2度と入れ替わる事はないだろう」
ゼノンの手には紫の小ビン。ためらいもなくコルクを開け、中を飲み干そうとするサーモンピンクの身体。
それを見て、彼女は今一度決意を固めた。
「私も…戻るわ。好きな人を悲しませたくないもの」
サーモンピンクはコルクを開けて一気に中身を口に入れた。甘い甘いイチゴの味が口の中に広がる。
それは、まるで夢の中にいるように甘くて────
ボンっ!!
小さな爆発音と綿菓子のような煙、それとキラキラと飛び散る火花が視界を奪う。
ラボに取り付けられた換気扇によって煙はすぐに掻き消された。
爆発の起きた中心に立っていたのは褐色の肌に筋骨隆々のサングラス男と、メリハリのついた身体の麗しい女。それだけではさっきと全く変わらないが…
「戻っ、た」
先に口を開いたのは美女───サーモンピンクの方だった。白魚のような手をゆっくりと動かし、やがて確信したように拳を握りしめる。
「あんたたち! よくも人の事を散々ブルドッグ呼ばわりしてくれたわね!?」
サーモンピンクは般若の形相で流石、クリムゾン、クリ(ニセ)に襲い掛かった。飛び蹴りをかまして引っ掻いて、とどめは馬乗りになって相手を逃がさないようにしてから鼻に指を突っ込んで、地獄の鼻フックの処刑コンボだ。
それを止めようか止めまいか、オロオロした様子でサングラス男───ゼノンが見ている。
「元に戻ったヨウですね」
安心したような残念なような、複雑そうな表情でシェラサが呟く。
「ふぅ、処刑完了★ マクシムからの処罰は追って下されるから覚悟なさいよ?」
数々の罵詈雑言に対する一通りの処刑を終えたサーモンピンクはスッキリした顔でゼノンに向き直った。
その表情は生気に満ちていて非常に美しかった。これがメスブルドッグ…いや彼女本来の美しさなのだ。
「ねぇ、名前ゼノンって言ったわよね?」
ゼノンが2〜3首をタテに振ると、彼女はにっこり笑い黒いブーツを鳴らしながらゼノンの前にやって来た。
「ほんの少しの間だったけど、その身体にいられて楽しかったわよ」
アリガトね、そう囁いてからサーモンピンクはゼノンの胸板に手を添えてゆっくりとつま先を伸ばすと、背の高いゼノンの頬に艶やかな唇を軽く押し付けたのだった。
予想してなかった事態に、ゼノンの顔が音を立てて赤くそまる。
「あー。サーちゃんウワキー。マクシミリアンシュナイダーに言い付けちゃオーッと」
ゼノンをより一層困らせてやる為にシェラサが囃し立てると、サーモンピンクの口からは意外な言葉が帰って来た。
「あら、コレは浮気でも何でもないわよ?
だってコレはもうひとつの私の身体ですもの。あなただってそうでしょうゼノン?」
不可抗力とは言えその美しい身体で自分がしでかした数々の出来事を思い返し、ゼノンは天井の穴へと逃げ込もうとした。だが、
「コラ、まだ帰るのは早いデしょう」
逃げ出そうとする白いシャツの裾をシェラサに掴まれ、ゼノンは逃げ帰る事すら許されない。
「今回の功労者に、コちらでしか手に入れられナいお土産を持ってかえるんでショウ?」
シェラサは黒い振袖の裾と、ゼノンの身体を引きずって悠々とアイリスのラボを出て行ってしまった。
またどこかでお会いしましょうと軽やかに手を振って。
「私からも、その功労者に宜しくね」
廊下を歩くシェラサの背中にサーモンピンクは声を掛けた。
そしてその姿は謎の振袖美人が秘研で目撃された最後の姿でもあったのであった。
その数日後。
秘研こと佐倉大本営研究所の広報部、ナターシャ秘蔵のBLエロ同人誌と美少年&美青年隠し撮り生写真集。
そして見栄えのイイ男性研究員達(幹部含む)の着替えと下着が根こそぎ行方不明になったことは、振袖美人最後の大仕事として秘研末代まで伝えられる伝説になるのであった…。
-fin-
special thanks for 相沢友弘@【NEW WORLD(仮)】
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