collabo 034 2/2




 果たしてアレはいつ頃の話だっただろうか。少なくとも当時の二人は20を越える立派な大人だった筈である。
 その年、自分の母親に感謝を捧げる日にゼノンはジェラからプレゼントを貰った。ジェラは幼い頃に母親を無くしたそうで、毎年その時期になると日頃世話になっている女性の間から母親ぐらいの年頃の女性1人選びささやかな贈り物をしているのだが、その年だけはどう言う訳だかゼノンだった。
 もらったプレゼントは絹のエプロン。だがどう見ても年輩の女性向けではないレースとフリルのたくさんついたかわいらしいものだった。当然男のゼノンに似合う訳がない。
 が、ジェラはそのエプロンを渡してあろうことか男のゼノンに対して、全世界の新婚さんの憧れ『若奥様の裸エプロン』を強要して来たのである。
 無論ジェラにそっちの趣味はない。ただの愛ある嫌がらせである。
 それだというのにジェラは王族命令を発令してゼノンに裸エプロンで料理をさせ(ちなみにウィンナーとソーセージをつかった料理と稲荷寿司をリクエストされた)ゼノンのその醜態一つでジェラは腹筋が筋肉痛になる程大笑いしてその年の母の日を過ごしたのである。
 そんな若さ故の苦い出来事があったため、ゼノンは裸エプロンがトラウマになり、このエプロンも厳重に封印して来た。
 当然この事はゼノンとジェラだけしか知らない。ゼノンの話を信じる為にジェラの出した条件が『このエプロンを再び付けて朝食を作る』であることは最早明確である。
 当時の思いでを振り返りゼノンはまたしても泣きそうになったが、ジェラに信じてもらうにはコレしかないのだ。
 ゼノンは絹のエプロンを手に取り覚悟を決めた。
 このエプロンを身に付けて、そして俺は過去を凌駕する…!

「お、おまたせ〜」
 テーブルに座って暇を持て余していたジェラの背後から、少し緊張気味の女の声がした。
「お腹すいちゃったカシラ? 今スグおいしいごはんを作るから、ま、まっててネ」
 そこに立っていたのは魅惑の果実の裸体に白いエプロンだけをつけ、長い髪をツインテールにした美女だった。恥じらいながらも冷蔵庫へと歩くその姿は妖艶な身体と相反する可憐さも同時に存在していた。
 一歩一歩あるくたびにそのたわわな乳房とむき出しの桃尻が揺れる。朝っぱらからイイ光景である。
「今日はトーストと目玉焼きと…あと温野菜サラダで、ぃ、いいカシラ?」
「そうだねぇ、あとデザートもつけてほしいなぁ〜」
「デザートはわ・た・し★」
「あぁイイねぇ、さいこ……ぼふーっ!!」
 後ろ姿だけ見ると全裸同然のその格好に、ジェラは耐えられなくなったように大声で笑い出した。
「な、何がおかしい! 陛下がやれっていったのにぃ!」
 トラウマである裸エプロンの羞恥に耐えられなくなったゼノンは、その場にぺたりと座り込むと今まで堪えていたものを一気に吹き出すように泣き出した。
「アハハハハ、ごめんねゼノン。君のその姿が可笑しい訳じゃないから。あー可愛いカワイイ」
 ジェラは泣き出したゼノンに駆け寄ると、今着ているジャケットを細い身体に羽織らせて、なだめるように抱きしめた。
 その声にゼノンは驚いたように顔をあげる。
「今ぜのんってゆった?」
「あぁ言ったとも。コレで確信したよ、姿は女性でも君は紛れもなく私の知っているゼノンだ。疑って悪かった」
「へ、へいかぁ〜」
 ゼノンは自らの細い両腕をジェラの首に絡ませて抱きつき、ついでに絹のエプロン越しの生巨乳を恥ずかしげもなくジェラの胸に押し付けて大泣きした。

 参ったな…これじゃあ種明かしができないじゃないか。
 美女と化したゼノンに抱きつかれながら、ジェラは内心苦笑いしていた。
 ジェラは本当は最初から知っていたのだ。この美女の中身がゼノンだと言う事を。
 最初に会った時の美女の反応は、10年前にゼノンが初めて人間──ジェラに会った時と同じものだったからだ。
 あの慌てっぷりと怯えっぷりは、忘れたくともなかなか忘れる事ができない。
 だけど女性に変わったゼノンの犬のような可愛らしさをみて、ついついからかいたくなってしまった。
 おちょくるだけおちょくって、適当な所でネタバラシをしようと思っていたのだが、ゼノンは違った意味で己の過去を凌駕してしまうし。完全にタイミングを逃してしまったのだ。
「お詫びに君の身体が元に戻るように私も協力するから泣かない泣かない。ゼノン君は強い子だぞー」
 泣いてる子供をあやすように、ジェラはゼノンの背中を優しく叩き髪を撫でた。
 シェラサの育ての親にして人格形成の礎となった男、ジェラルディン3世。
 その愛情表現はどっかしら歪んでいたのであった。


 to be continued...


special thanks for 相沢友弘@【NEW WORLD(仮)】
copyright(c)2005 相沢友弘 all rights reserved.




  back

  collabo
  menu
  home