collabo 035 1/2
『真夏の果実』4
実家は事業を大成功させ貴族にもひけを取らない財力を持つ武器商人で、御自身の魔法の実力は最強にして超一流。おまけにカワイイし頭もいい。
財力も権力も実力も容姿も頭脳もなにもかもを手に入れた、生まれながらにして人生の勝ち組であらせられる我等が美幼女魔術師チェリル様は、本日は御自分の執務室で優雅に紅茶の香りを楽しみながら古文書のページをめくり、古代文学の研究に勤しんでおられたのでございました…。
「うっほほ…うっほほホウ!
やっぱりボーイズラブ同人誌はエロエロにかぎりますなぁ〜。激しくたまらんゼヨ!」
脂下がった目元にのびきった鼻の下の目線は、古文書の中で妖しく裸体を絡ませる美少年達に釘付けである。
これでは幼女というよりも、三流新聞記事の風俗ページに顔を緩ませる中年オヤジだ。
チェリルは興奮を抑え切れないように次のページを捲る。古文書の二人はもうすぐフィニッシュを迎えようとしているのだ、誌上で彼らの恋愛模様を見守って来たチェリルがコレを見逃す訳にはいかなかった。
だがしかし、悲しいかな次のページは無惨にも存在していなかった。良く見ると最後のページは焦げ後のようなものがついている。
古代文明は世界を挙げた戦争でその歴史の幕を閉じた。
どんなに美麗状態で遺跡から発掘された古文書でもページの一部が戦火により焼けこげていたりして多少解読出来ないのは良くある事で、チェリル自身もそれは仕方がない事だと諦めていた。だがしかし───
「他は綺麗なのにラストだけ焼けてるってどう言う事よ!?
戦争反対! 過剰な人権保護法案反対!!」
時代の流れた先にあるピルム国の呪文研究所から古代に向かって叫んでも、古代人達に聞こえる訳ないのだがそれでもチェリルは叫ばずにいられなかった。
執務机に突っ伏して泣き崩れている所でノックの音が2つ。チェリルは顔をあげるとドアのむこうに向かって言った。
「帰って。今は誰とも話したくないの」
「つれないねぇ私のおヒメ様は。せっかく面白いものを献上しようと思いやって来ましたのに」
わざと恭しく話す低音の男の声にチェリルはドアへ駆け寄った。
「陛下!?」
「ヒメ自らのお出迎えなんて嬉しいねぇ。泣いていたみたいだけど、なにか悲しい事でもあったのかな?」
ジェラはチェリルの小さな身体を抱き上げて、青い瞳の目尻に浮いた涙を指先で拭ってやる。
「べつに大したコトじゃないもん」
「そうなのかい?ならいいけれど」
まさか古文書のラストだけ焼け落ちていたから泣いていたなんて言える訳なかった。
チェリルが話したくなさそうなのでジェラもそれ以上は追求しないでおいてやる。
「今日は君がこっちにいてくれて助かったよ。ユニコーン捜索任務で表に出られたら探すのも一苦労だ」
「なにソレ職務怠慢してるって遠回しに言いたいの? あたしだってたまには身体をやすめないとやってらんないわよ」
「そう言う事を言っている訳じゃないよ。今回は君に是非みて欲しいものがあって出向いたんだ」
入っておいで、とジェラはドアの向こうにいる人物を手招きした。
黒皮ブーツのヒールが床にあたって高い音をたてる。少し躊躇した後で入って来たのは栗色の髪の若い女性────ゼノンであった。
アシンメトリーになった裾がゆらゆらと揺れる、マーメイドラインを描いた純白のエスカルゴスカートをはき、繊細なシフォン生地で作ったフレアー袖のチュニックブラウスは、黒地にオレンジとピンクの可憐な小花模様で鎖骨を見せる為に大きく開いた胸元からは谷間が覗き、胸元に付けたアッシュピンクの薔薇コサージュが彼女の豊かな胸元を更に強調している。
緩く編んだ髪が時折キラキラと輝くのは、一緒に編み込まれた小さなラインストーンのせいだ。
もともと美しかったが着飾る事で更に美しく、そして可憐に生まれ変わったゼノンはなれないヒールでよたよたと二人の前に来ると、恥ずかしそうに頬を染めて俯いたのだった。
「どうかな? 私の力作なんだけど」
「なにこの原始人。どっから連れて来たのよ」
自身満面のジェラと不満顔のチェリルが同時に声をあげた。
「やっぱり俺は陛下に弄ばれただけだったんだ…」
情け容赦ないチェリルの言葉がクリティカルヒットで巨乳に刺さり、ラメ入りマスカラとアイラインのついて気持ち重くなったゼノンの目元に涙が滲む。
「原始人ん? そりゃ変身させる前は原始人と呼んでも可笑しくない格好だったが今は違うぞ!?
私の服のコーディネートもメイクのセンスもヘアメイク技術もあわさって非常に可愛くなったじゃないか!
素材の方も勿論だが、それ以上に私の技術とセンスの一体ドコに不満がアルと言うのだね!!」
「あんたこの女原始人を見せに来たのか、それとも自分の技量を自慢しに来たのかどっちかに絞りなさいよ!
それに、あたしが原始人って言ったのはそういう意味じゃないわよ!!」
「どう言う事だい?」
ジェラは泣きそうになっているゼノンを宥めながらチェリルに問うた。
「たしかに外見はキレイに出来てるけど、あたしが言ってる事はそーゆー問題じゃないの。
その女の身体には魔力が一切存在してないの。そんな原始的な身体の作りの人間が今の世の中に存在するハズないわ。だから原始人。わかる?」
さっぱりわからない。
「人間の中にも魔法を使える人間と使えない人間っているでしょ? あたしみたいに魔法が使えるのは単にその魔力の内包量だとか濃度だとか強度が魔術を使えるレベルまで到達しているからだけであって、使えない方の人間にも魔力は微量ながらちゃんと存在するの。魔力がナイって言っても差しつかえがないぐらい微量にね。
本来人間の身体には魔力と言うものが存在しない。魔力のある人間ないし亜人種が出て来たのは古代の戦争で使われた兵器の影響がまだ体内に残っていて、それが定着してしまったから。
でも新たな時代が始まってから長い年月がたった今、その間に魔力のある人間とない人間が肉体的に交わらなかった事なんてないの。つまり魔法を使えない人間でも先祖を遡って行けば、その中に高い魔力を持っていた者が必ず1人はいるようになっているの。
その血の影響によって、今の世の中に全く魔力がない人間っていうのは存在しなくなってるのよ。ただその魔力が総じて強いか弱いかの違いね。
だからその女は古代の戦争後、外部接触を一切断って来たような山奥の小民族だとか古代人の血筋が色濃い原始人ってワケよ。わかった?」
なんだかわかったようなわからないような説明だが、とりあえず今のこの身体がゼノンの力を全く使えないようにしている事は良くわかった。
「それで? この女が一体どうしたって言うの」
ゼノンに変わってジェラは今までの事情を説明した。
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