collabo 037 1/2
『真夏の果実』6
その後も二人でシェラサの出没しそうな場所を巡ってみたが、結局シェラサを発見出来なかった。
「どこで遊び惚けているんだアイツは…」
馴れないヒールの感覚に足が追いつかず、ゼノンは公園のベンチに座り込んだ。
「まぁまぁ。単に入れ違いになっていただけかも知れないだろう?」
ジェラは近くの出店で買って来た冷たいフルーツジュースをゼノンに手渡す。
「それだったらいいけど……でもこのままシェラサが見つからずに一生この身体のままだったらどうしよう」
「さすがにソレは無いと思うけど」
日中は見つからなくても夜にはどうせ帰って来る。帰って来なければユニやキリークにも協力してもらうという手だってある。シェラサ捜索に十翼将全員投入したっていい。
だが……フルーツジュースを飲みながらジェラは思案をめぐらせた。
「ねぇゼノン、もしもの話だよ?
もし君が本当に元に戻らず一生その身体にいなければならないとしたらどうする?」
ソレを聞いた途端ゼノンの両目に涙が滲む。
「あーもう。もしもっていってるじゃないか。
絶対そうなる訳じゃないけど、最悪の事態は常に想定した方がイイってだけの話で」
ジェラは持っていたコップを脇に置いて、ゼノンの涙を拭き取ってやった。
「もしも…?」
「そうそう。例えば爺連中に私の花嫁候補として認められた事だし、最悪戻らなかったら何もかも諦めて私と結婚するとかさ」
「ナイない! 絶対ありえない!!」
ゼノンは手を振ってその可能性を即座に否定した。
「…本気で結婚受諾されても困るけど、速攻否定されても逆に傷つくよ?」
「すまん…」
「まぁいいや、許してあげよう。言っておくが私は君が女じゃなかったらこんなに優しくしないぞ」
とにかくこれは戻らなかった場合の想定話だ。
ソレを踏まえた上でゼノンは考え、やがて艶やかな唇を開いた。
「この身体では剣は振れない、精霊達の姿も見えないし回復も催眠も、精神破壊も何も出来ない。
だから特殊部隊の座は少し早いけどあの娘に───ネ−プルに譲ろうと思う」
自らの想定外の選択肢にジェラは目を丸くした。ソレに気付く事なくゼノンは話を続ける。
「今のネ−プルは精霊が見えつつある。あとは精霊達との付き合い方をきちんと教えてやれば回復も催眠も、剣以外の事は全てできるようになる。霊との戦いも精霊達が一緒なら協力して勝つ事もできるだろう。
そうなったら俺がピルム状にいる理由がなくなる。俺は外にでてこの身体の持ち主を探すつもりだ」
「そんなにまでして元に戻るつもりかい? もう帰る場所もないと言うのに」
「そんなんじゃない」
ゼノンはゆっくりと首を振った。
「アレは…あの身体は罪人の身体だ。近いウチに裁かれるべき身体なんだ。
この身体の持ち主がいつまでもあんな身体に入っていたら、俺の変わりに罰を受ける事になってしまう。
だからその前に俺の身体を見つけだして、肉体と一緒に彼女の精神が『消去』される事を防がねばならない。
本来罰を受けるのは俺なんだ。このままだと俺の肉体と一緒に彼女に罪を着せて、俺自身は彼女の中で生き長らえる事になってしまう。それもまたバランスの崩壊を担う事になり新たな罪の始まりになる」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんなんだその罪と罰っていうのは!?
すくなくとも君はピルムの法に触れるような事はしていないし、裁かれるような謂れはないはずだぞ?」
「それはヒトの中の掟だろう」
困惑するジェラに、ゼノンはハッキリと言ってのけた。
「俺が犯しているのはヒトの掟じゃない、この世界そのものの掟だ」
今ジェラの目の前にいるのはゼノンでも、可憐な美女でもない。
凛として前を向く、全く遠い世界の存在だった。
「俺の罪も受けるべき罰の話も、全てが終わったらちゃんと話す。だからソレまで───」
「わかった。特殊部隊には話さないでおこう」
一言頷いて、何事もなかったように温まったジュースを飲み干す。
今のジェラにはそれしか出来なかった。
* * *
その話はゼノンの核心的な部分も出て来てしまったのだが、今回は飽くまでも最悪な事態を想定した場合の話だ。
現実面での二人の課題は『シェラサを手がかりに元の身体とその中にいる彼女の精神を探し出す事』なのである。
「ココにもいないねぇ?」
次に来たのは洋服屋だった。子供服から老人用まで、幅広い年代の洋服を必要とするシェラサならきっとどこかにいるはずである。
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