collabo 039 1/1




『後日談』


 テスト期間を終えたユニ役の井手祥子は、その日約二週間振りにスタジオに足を踏み入れた。
「お、ショコちゃん久しぶり。テストどうだった?」
「レージ兄ぃー! 聞いてよ新キロクー!!」
 祥子はセーラー服姿のまま、これ以上ナイくらいの満面笑顔でキリーク役の片桐玲司に抱きついた。
「国語41点数学32点エーゴ37点、歴史と科学は97点ー!!」
 幾ら役柄と役者自身の本質は別物とは言え、祥子の学力が低すぎるのは今後の事を考えると大問題である。
 と、言う訳で現役大学生の玲司を中心にスタッフ総出で祥子の学力向上のための大勉強会を開いたのだが、祥子の特に苦手とする歴史と科学に重点を置き過ぎたのが間違いだったらしい。
「ショコちゃん…苦手教科を良くぞココまで克服した。ソレは偉い。偉い…ん…だけどね」
 玲司は祥子のこめかみに自らの拳を押し付け力一杯回転させた」
「国数英がそんな低くてどうするんだ受験生!! そりゃ理社ばっか片寄った教え方した俺らも悪かったけど、でもいくらなんでもこの点数はないだろう!!」
「ウキャー! あたしホリコシ行くからベンキョなんてべつにいいんだもーん!!」
「堀越ぐらい漢字で言えるようになりなさい!!」

「なーにーをー騒いでおるのだね子供達よー」

 ババーンとワザワザ効果音付きで現れたのは、ゼノン役の榎本善次郎(33)であった。
「あっ、ちょっと先輩聞いて下さいよコイツ受験捨てて堀越行くとか言ってンですよ!? 堀越漢字で言えない癖に!!」
「助けてゼンジロさーん! 理社はイイ点取ったのにレージ兄がウメボシグリグリでいじめるー!!」
「はっはっは喧嘩両成敗だぞーう。父の愛をくらえーい」
 善次郎は大きく両腕を広げて祥子と玲司を抱き寄せた。
「ギャァ! クサッ、ニガクサい!! お父さんの臭いがするよッッ」
「大体先輩さっきからなんなんですかそのキャラは!?」
「ん〜特に意味はない。強いて言うなら話題の中心を俺にしたかった」
 善次郎は二人を拘束していた両腕をあっさり手放した。
「うわーん制服にオヤジ臭が伝染ったー」
「それで一体何しに来たンですかアンタは」
 大泣きする祥子を宥めながら玲司が尋ねると、答えるかわりに善次郎は一枚のDVDディスクを取り出した。
「ジャーン。こないだ演った交換コラボが完成したんだ」
「交換コラボ?」
 今まで泣いていた祥子が首をかしげる。
「あーショコちゃんテストだったんだっけ?
 ホラあそこのサイエンスコメディの人をウチに呼んで逆コラボって企画話あったじゃん? アレが正式に企画として通ってさ。
 ンでせっかくだからお互い入れ替えてトレード話って事になって、俺が向こうのスタジオ行って俺のかわりは沙問さんがこっちに来てくれてたんだよ」
「俺も先週は大学の方が忙しかったンでスタジオ顔出せなかったんですけど、でも先輩よく行きましたよね。向こうの役者苦手って言ってたのに」
「そりゃ本の中身がヨカッタからねー。それに向こうの役者もスタッフも新しい事がしたかったみたいでさ、1話終わるまでカメラ回しっぱなしでカットなしのぶっつけ本番、舞台本チャンみたいな撮り方したもんだから、画面から見ても演技の迫力が違うんだよ」
「よく出来ましたねそんな荒技」
 上機嫌で語る善次郎を玲司は呆れたように見やった。
「うん。アッチはTV撮り馴れしてるから正直あんな荒行付いていけるのか不安だったけど、一発本番も俺のアドリブにも食いついて来れたし、後半になると逆にアドリブだって繰り出して来るし、演ってて非常に面白い現場だったよ。
 だからよく長台詞噛んじゃうコとプチパニック起こすコにゼヒ見せたげたくってさ」
「噛まないモン!!」
「トチりません!!」
 祥子と玲司が同時にブーイングを起こす。
「まぁまぁ、先輩達の演技を見るのも勉強の一つだ。コレあげるからじっくり見て匠の技を盗んでごらん」
 俺は稲村君にピルムサイドのVTR見せてもらって来る、と言い残して善次郎はどこかに行ってしまった。
 稲村というのはジェラルディン3世を演じるハーフのピン芸人稲村ジェーン(芸名)の事である。ピルムサイドはどうやら稲村と沙問が中心になって演っていたらしい。

 初めの頃にくらべれば祥子も玲司も演技はかなり上達している。もう噛んだりトチったりする事も少なくなって来ているのだが、それはそれとして熟練のTV俳優達が舞台並の熱演をしているというのは気になった。
「先輩はどうでもいいけど、ちょっとだけみてみようか」
「そうだね、テスト終わったし」
 二人は役者控え室に設置されたPS2にディスクをセットした。


『ぎゃああああああ!!! わ、わわ私に生えてる! 付いてる!』
 そしてマクシムの股間に目をやって
『勝った! 私の方がでーかーいー!!』
『言うなぁ! 自分の彼女より小さいなんて男としてのプライドがーっ!!』


 DVDセット直後の画面一杯に現れたのは、全裸の股間でぶらぶら揺れる2本の肉棒だった。
 それは恐ろしい事にモザイクもぼかしも、ブルーフィルムすら掛かっていない無修正の状態で。
「センパーイ!! 子供相手になんてモノ見せてンですかアンタ!!」
 気絶した祥子の身体を抱えて玲司が控え室を飛び出したのはその直後の事である。


 -fin-


special thanks for 相沢友弘@【NEW WORLD(仮)】
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