order book 001 1/5
『ストロベリージャム』
「あー、去年はこれもらったんだったなあ・・・」
6月14日、深夜2時。
部屋の中の大部分を占めている巨大なソファに寝そべって、私は自分の手をまじまじと見つめていた。
深夜の空気が辺りを満たして、静まり返った部屋の中。
自分の手を見ながら独り言だなんて。私、ちょっと寂しいのかな?
そんなことをまたぶつぶつ口に出しながら去年の同じ日を一緒に祝ってくれた人の事を思い浮かべる。
「今日はどうなんだろうなあ・・・」
そういえば、仕事が忙しいとか飲み会がどうとか前になんやらかんやら言ってた気がする。
ま、今に始まったことじゃないけどね。
仕事柄、テツは休みも時間も不規則で、私たちは付き合っているとはいってもなかなか会うことができない。
今度はいつ会える? などという約束も、空手形に終わることが多いため最近では約束もしなくなってしまった。
だから、私にとっての特別な日であっても、ちゃんと覚えててくれるかどうかはわからないのが現実で。
ただ、今回は前振りを一応メールで送ったので、思い出してくれてる、だろうと思っていた。
「真知ちゃ〜ん」
ちょうどその時玄関で声がした。
テツだ。
しかも酔っ払ってる。
深夜だというのに、語尾にハートマークやら音符やらが沢山くっついてきそうなテンションでへらへらと笑顔を作るテツ。
−−−うっわあ、酒臭い。
両手を広げて抱きついてくるテツを支えながら私の口からはため息がもれた。
まったく、何時だと思ってるんだろう。私はいつでも24時間営業だって勘違いしてるんじゃないだろうか。
会いたいとか来てほしいと思いながらも、こう深夜ばっかりだと待つのもつらい。
いや、待つのは別につらくないけれど、次の日仕事に差し支えるから嫌なのだ。
テツが深夜に訪れるなんて事はいつものことだけれど、今日はなんだかイライラしてしまう。
それはやっぱり「誕生日」という自分にとってはひとつの区切りだったり、特別な日だという、これまた特別な思いがあるからだろうか。
6月14日、私の誕生日。現在午前2時を過ぎたところ。
私の誕生日はまだ始まったばかりだし、来てくれたってことはやっぱり誕生日だって事を覚えててくれたのだろうと、その時私はそう思って自分を納得させた。
へろへろのテツをやっとの思いでソファまで運び水を持って来て飲ませると、その水をものすごい勢いで飲み干してからタコのようにぐにゃぐにゃとまとわりついてきた。
「ねえ、真知ちゃ〜ん」
やっぱりハートマークやら音符やらをそこら中に撒き散らしながら。
甘え声でまとわりつかれても、もう寝ないといけない時間だし、相手したくないんだけどこの酔っ払いめ。
私は眉間にしわを寄せながらも、テツのタコ攻撃がちょっとツボにはまったせいもあってなんとなくいつものようになし崩しにテツを受け入れてしまうのだった。
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昨日は予定よりも少しだけ早くに仕事が終わったので、うきうきしながらスタッフの数人とで飲みに繰り出した。
そしてその宴会は予想以上に盛り上がり、ついつい遅くまで飲み歩いてしまった。
ひとしきり飲んで騒いでお開きになった後、俺の頭の片隅には真知の家に行けというシグナルが点滅。
どうして真知の家なんだかはっきりとした理由は思い出せなかったけど、急いでタクシーをつかまえて真知の家へ向かった。
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