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 時刻は午前2時、もう寝てるかもしれないとかそんなことはお構いなしに俺は持っていた小さい鍵で真知の家のドアを開けた。
 案の定真知は起きていて、俺が到着すると嬉しいような困ったような複雑な表情をして見せた。

 真知に水をもらうと、無性に真知にまとわりつきたくなってしつこいくらいまとわりついた、記憶がある。


 そして、現在。
 隣にいるはずの真知はすでに姿を消していて、俺は今日が何曜日だったか、モヤのかかってる脳ミソを無理やり働かせた。

 そうか、平日だったね。

 真知は仕事に出かけた後だった。
 テーブルの上にはちょっとしたメモ書きが残されていて、コンロにある鍋の中には、温野菜のスープ。
 二日酔いの人用、と言って真知がよく作ってくれる定番メニュー。

 −−−今日は何時に帰ってくるんだろ?

 鍋の中身を温めながら、仕事から解放されて戻ってくる真知の姿を想像し、俺は一人でニヤニヤしていた。


 今日は久し振りのオフ。
 勝手知ったるなんとやらで、真知の家は俺にとっても我家のようにくつろげる空間になっている。

 ビデオラックからDVDを取り出して見てみたり、本棚から面白そうなタイトルの本を見つけ出して読んだり、ゲーム機を引っ張り出して遊んでみたり。
 昼過ぎに起き出して、夕方真知が帰ってくるまでの間、俺は一人の時間を満喫しまくった。



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 まだ家に、家にいるだろうか。
 今日がオフだとかそんなことはぜんぜん聞いてないから、もしかしたらもういないかもしれない。

 心の中に少し冷たい風が吹き抜けるような感覚を覚えながら、私はハンドルを握りアクセルを踏み込んだ。

 会いたい。素面の彼に会いたい。夕べみたいなタコじゃなくって、普段のゆるみ切ったテツに。
 久し振りに普通の会話もしたいし、ちょっとおしゃれして外へ食べにも行きたいなあ。
 普段めったにできないこと、今日くらいはおねだりしてみてもいいよね? それくらい、いいよね?


 少し残業が入ったので、いつもより遅くなった帰宅時間。
 今朝はあんまりよく寝ているから起こすのも忍びなくて、結局置き去りにしてきてしまった大切な人。
 早く家に帰りたいとはやる気持ちを抑えつつも安全運転で家に向かう。

 まだいるだろうか、それとももう帰っちゃっただろうか。

 電話かメールで確認する手段もあるにはあるけど、あいにく私の携帯はこんな時に限って充電切れで使えない。
 駐車場からの道のりを早足で歩いて家の前に着くと、自分の部屋の明かりが目に入った。

「ただいまー」

 ドアを勢いよく開ける。
 部屋の電気はついている。玄関には、今朝と同じ姿の大きな靴が一足。
 思わず顔が緩んだのもかまわず、私はリビングに向かった。

「おかえりー」




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