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『リズム』
ぼんやりとした視界に、朝の光がかすかに注ぐ。
光といってもついさっきようやく朝日が顔を
覗かせたというくらいの光で、
ふたりの体温だけが、この部屋にある暖かさの全てだった。
…あったかいな。
彼の肩に、腕に、頬に触れて私は改めてそう感じる。
まるでさっきまでの熱が―あれはまさに
熱と呼ぶに相応しい―そこかしこに
残っているような。
彼の私を想う気持ちが、
私の彼を想う気持ちが、
全てその熱となって外へと―
身体の、想いの外側へと噴出したような。
そして力強さも、脆さも、
全てを包んだような。
彼の暖かさは、そんなものを感じさせた。
その胸に、そっと手を置いてみる。
トクン…トクン…
規則正しいリズムを響かせる、彼の心。
私はふう、と息を吐いた。
呼吸してる。
彼が、今ここで生きていてくれる。
暖かさをくれる。
それはきっと、彼自身は何ひとつ意識してはいないこと。
けれど、私がいちばん欲しかったもの。
そしてきっと、私がいちばん守りたいもの。
例えいつか、あなたに私の温もりが必要なくなったとしても、
私の手が必要なくなったとしても、
ずっと、私には必要だから。
この部屋に射し込む
少し頼りなさげな朝の光のように、
大切に、慈しむように、
あなたと一緒に守っていきたい。
でも
一緒に守れなくなっても、
私はずっと守っていくから。
この手を、離さないで。
その心が刻むリズムを、ずっと聞かせて。
-fin-
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