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 俺は絡んだ指先からその手を強く握り締めて、足早に、おまえをほぼ引きずりながら歩き出した。
「ちょ、ちょっと、なに!?」
「無理」
「は?」
「明日は休みだ」
「はぁ?」
「寝かせねえ」
「はぁぁ? ちょっと……」
 抗おうと振り回す手は、それでも拒みきれないようで、俺の手に食い込む爪も痛みの程度はよほど甘い。
 本当はおまえだって欲しいくせに、素直にならないその態度もよほど甘い。
「なあ」
 今度は俺が先に立ち止まり、ニ度目の衝撃を予測したおまえが一歩下がろうとするのを、手を引いて制した。
「帰りたくないって、言えよ」
「……そっちこそ、帰したくないって言えば」
 挑みかかるその視線。
 先に惚れた方が負けだというのなら、既に俺に勝ち目はない。
 けれど俺は、気分で香水を使い分けるおまえが、俺の前でジャスミンばかりを身に纏うようになった理由を知っている。
 おまえがそのひんやりとした肌の下に、ひどく熱いものを隠していることを知っている。
 完璧に施された化粧の仮面を剥ぎ取れば――絆されるより強く、俺のテリトリーで匂いを放つ白い花。
「……ま、いいわ」
 怪訝な顔のままのおまえの手を引いて歩きながら、俺は口の端を吊り上げた。
 それは多分さっきのおまえと同じで、見上げる空のあの三日月と同じ形。天邪鬼の主張に気づいて、密かにほくそ笑む優越。
 今夜あたり、強情なおまえに言わせてみせるのもいいかもしれない。
 その瞬間の至福を思いながら、俺は僅かに歩調を速めた。

 部屋のドアに手をかける頃、おまえの冷えた指先はきっと、それを握り締めた俺の熱と同じ温度。
 日暮れて香りを増すジャスミンに、「俺はおまえのものだよ」と言ってやるから。
 だから、今夜は。
 夜明けまで、そのまま絡まって――聞かせろよ、いつも以上に俺を欲するその音を。

『ねえ、私、あなたがす………』


 -fin-


The Jasmin is meaning that you are mine.

reproduced 【CENTURY】

special thanks for RouRou@【CENTURY】
plan and scenario : RouRou
scenario : 真知
copyright(c)2006 RouRou and 真知 all rights reserved.




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