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『ハロウィンの選択肢』


 10月31日。午前0時。
「ピンポーン♪」
 ドアベルが鳴った。
 …。
 準夜勤を終えてようやっと家に帰り着いた、疲れてくたくたなあたしは、酔っ払いが部屋でも間違えたんだろうと無視を決めこもうとした。
 けど。
「ピンポンピンポンピンポーン♪」
 …。
「ピンポンピンポーンピンポーン♪」
 誰よこの夜中に人んちのドアベル連打してる阿呆は!? 常識を知れ常識をー!!
 疲れのせいかいつもより短気で怒り心頭なあたしは、ダッシュで玄関まで向かう。
 きっと犯人はアイツだ。アイツしかいない。アイツに決まってる!
 根拠のない決め付けも、玄関をガバッと開けてみたらやっぱり正解だった。
「よぉ」
「バカ公紀ッ! 近所迷惑!」
 叫んだあたしの脇を「しぃっ」とすり抜けて、件の男はまんまと家の中へ。
「相変わらず元気良すぎ」
 コンビニのビニール袋から缶ビールを取り出して居座る雰囲気の公紀に、元気と強気はあたしの専売特許よとつっかかろうとして、思い直す。
 始めのうちに自分の意見を通しとかないと、こいつに流されるのは目に見えている。
 (と言うか、これまでの経験から学んだ)
「あたしは寝るわよ」
「えーつまんなーい(棒読み)」
「…その口調やめて。余計疲れるから」
「なんだ、疲れなら俺が全身マッサージで隅から隅まで」
「煩いイヤラシ系! あんたは一人で酒呑んでなさいよ」
「ほう、そうきたか」
 …?
「大人しくしてりゃぁ菓子(酌)あたりでガマンしてやったのに。ウチのはねっかえりはやっぱイタズラの方がいいみたいだなぁ?」
 意味不明な台詞に一瞬ポカンとしてたら、床から掻っ攫われて、肩の上。
 担ぎ上げられたまま、ズンズンと大きな歩幅で寝室のドアの前まで運ばれる。
 あたしは今更になって、公紀が今日のこの時間にウチに来た意図に気が付いた。
「アンタはっ…始めっからこのつもりでっ…!」
「まぁ、わざわざ仮装しなくたって、狼男を地でいってるからな俺は」
「それ全然自慢じゃない! 降ろしなさいよこの変態ー!」
「小娘は素直に喰われてろ?」
 ハロウィンだろうが何だろうが、この男はどうせ自分のしたいようにするのだ。
 『Tric or Treat?』なんて、そんな選択肢、あたしには始めっからないに等しい。

 その夜、あたしはロクでもない男に惚れてしまった自分の未来を少し嘆いた。


 -fin-




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